産業医を利用して社員に「退職勧奨をさせよう」とする管理職が未だにいて愕然【産業医マニュアル】

顧客からのクレームが続き、「本当に、彼に業務を続けさせていいのか?」とまで言われてしまった社員さんがおられました。60代後半ということもあり、「認知症が疑われる」ということで産業医面談を受けていただくことになりました。

面談で話をする限りでは、受け答えも問題なかったのですが、長谷川式認知症スケールで簡易検査を実施したところ、「認知症疑いあり」という結果でしたので、自宅近くの病院の物忘れ外来を受診していただくこととしました。

その旨を、社員さんの所属する部署を統括する管理職の方にお伝えしたところ、「認知症かもしれないのに、このまま働かせるのは不安。どうしてすぐに出勤停止としてくれなかったのか」と言われました。

「クレームはたしかにありましたが、すぐに出勤停止をする必要がある理由は現在のところ見当たらないと思います。まだ診断確定もしていない段階ですので、まずは受診勧奨し、その受診結果を踏まえて今後のことを話し合いませんか?」と返答しましたが、納得いただけていないご様子。

さらには「認知症疑いがあるということで、退職を促してもらうことはできませんか?」とのことで、明らかに退職勧奨をするよう求められてしまいました。

「産業医の役割上、それはできません。受診結果をもとに、就業継続可能かどうか、またご本人をまじえてお話しましょう」と繰り返しお話をしましたが、やはり「すぐにでも辞めてもらいたい」とのことでした。

未だに退職勧奨を産業医にさせようとする管理職がいることにも驚きですが、やはり未だに「病気なら働けない、辞めてもらう」という考えになってしまうのか、と悲しく感じてしまいました。

こうした退職勧奨案件に関与させられてしまう可能性もありますので、産業医としてはやはり気をつけていく必要があるな、と改めて思った次第です。

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