「喫煙室の廃止を訴えたら契約解除された」という嘱託産業医の主張に対する3つの疑問

某医師掲示板に、ある企業の嘱託産業医を務めていたという方の投稿が行われていました。

掻い摘んでその内容をお伝えすると、大手企業の支社を長年務めていたが、建屋の喫煙室を「廃止・撤去」するよう強く求めたところ、「解約したい」という申し出があったとのことです。

「タバコの害を認めない」「喫煙を励行しているかのようだ」とこの産業医は主張していますが、私としましては、少々疑問に思うところがありましたので、今回、この件について私見を書いてみたいと思います。

「喫煙室を廃止・撤去」=社員の健康増進に繋がるのか?

私を含め、非喫煙者としては別に喫煙室がなくなろうと困りませんが、喫煙者にとってはそうはいきません。もし喫煙室がなくなった場合、恐らくこうした喫煙者は「禁煙をしよう」という思考ではなく、「どこか吸える場所はないか」と考えるのではないでしょうか。

施設内のどこか隠れた場所、もしくは施設から少し離れた喫煙場所に出向き、そこで喫煙をするだけのことではないでしょうか。つまりは、たとえ施設内の喫煙室を廃止・撤去しようとも、喫煙者はあまり減らず、隠れて吸う、もしくは外で吸う可能性があります。

結果、「煙い」と社員や近隣住民からのクレームが出てくるなんてことも考えられます。それならば「決められた場所」で吸ってもらった方がまだまし、ということではないでしょうか。

禁煙を推進するための活動はそもそもしていたのか?

上記のことにも関連しますが、そもそも日頃の産業医の活動の中で、禁煙を推進するために何か動いていたのでしょうか?

たとえば、安全衛生委員会の中で禁煙についての講話を行ったりすることでもいいでしょう。禁煙外来についての情報提供を行うことでもいいと思われます。

こうした活動もなしに、「喫煙室を廃止せよ、撤去せよ」と強硬に言い続けるのでは、それは理解を得られないのではないでしょうか。

段階的に喫煙室の廃止を進めることは検討したのか?

やはりいきなり「喫煙室の廃止・撤去」と主張するのでは喫煙者の反発が予想されますので、「段階的に喫煙室を使えない状況にする」といったことは検討されたのでしょうか。

たとえば、就業時間内にいつでも喫煙できるような状況でしたら、「喫煙可能な時間を制限する」「就業時間内は喫煙不可とする(昼休憩、就業後なら喫煙可)」などの段階を経るということを検討はされたのでしょうか。

喫煙者にとっては、やはり今まで得られていた「権利」をいきなり全て奪われるというのでは納得できないという心境になるでしょう。

それならば、「非喫煙者は休憩時間が決まっているのに、喫煙者はいつでもタバコのために休憩を取れるのは不公平です。なので、喫煙可能な時間を制限するのはいかがでしょうか?」などといった理由づけを行った上での提案をする必要があるように思われます。

以上です。
もちろん、この産業医の先生も「よかれ」と思っての提案、主張だったとは思われますが、なんら方策もとらずに大鉈を振るおうとするのは、「それは無茶でしょ」と思ってしまいます。

ただ、当然のことながら喫煙室はない方がよろしいでしょうし、社員全員が非喫煙者となってくれることが理想でしょう。それを目指すためには、やはりそれなりにアプローチする方法がある、と思った次第です。

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