「許容濃度と管理濃度の違いは?」に対する回答例
労働衛生コンサルタント試験の口述試験で、「許容濃度と管理濃度の違いは?」と質問された場合、以下のような回答ができると思います。
許容濃度とは、「労働者が1日8時間、1週間40時間程度働く場合、有害物質の平均暴露濃度がこの数値以下であれば、ほとんど全ての労働者に健康上の悪い影響が見られないと判断される濃度」のことです。
管理濃度とは、「有害物質に関する作業環境の状態を評価する上で、管理区分を決定するための指標」のことです。
いわゆる定義にまつわる部分であり、まずはこの点を答えられるようにしましょう。
・それぞれの評価対象は?
許容濃度→人への暴露濃度
管理濃度→事業場における有害物質の濃度
・測定を行う方法は?
許容濃度→個人曝露モニタリング
管理濃度→作業環境測定により、その数値を測定する。
・定めているのはどこ?
許容濃度→「日本産業衛生学会」が勧告を行っているものであり、法的規則はない。
管理濃度→厚生労働大臣が告示するものであり、法定規制がある。
以上です。
さらに詳しい説明につきましては、以下に書いておりますので、一通りお読みいただければと思います。
許容濃度とは
許容濃度とは、「労働者が1日8時間、1週間40時間程度、肉体的に激しくない労働強度で、有害物質に暴露される場合に、当該有害物質の平均暴露濃度がこの数値以下であれば、ほとんどすべての労働者に健康上の悪い影響が見られないと判断される濃度」のことである。
評価の対象は「人への曝露濃度」であり、測定を行うのは「個人曝露モニタリング」である。
「日本産業衛生学会」が勧告を行っているものであり、法的規則はない。
日本産業衛生学会の許容濃度等委員会は、毎年1回、化学物質の許容濃度や生物学的許容値、発癌物質と物理的環境因子の許容基準について勧告を実施している。
管理濃度とは
管理濃度とは、「作業環境管理を進める上で、有害物質に関する作業環境の状態を評価するため、作業環境測定基準に従って実施した作業環境測定の結果から作業環境管理の良否を判断する際の管理区分を決定するための指標」である。
評価の対象は、「事業場における有害物質の濃度」であり、作業環境測定により、その数値を測定する。
厚生労働大臣が告示するものであり、法定規制がある。
関連キーワード:抑制濃度
抑制濃度とは、「発散源付近における、有害物質の濃度をその値以下に抑えることによって、作業者のばく露濃度を安全水準に保つよう意図して定めた濃度」のことである。
鉛、特定化学物質などについて、局所排気装置が適切な機能を維持しているかどうかを判断するために測定を実施する。局排フードの外側の濃度を評価するため、局所排気装置の性能検査を実施する。
厚生労働大臣が告示するものであり、法定規制がある。
「許容濃度と管理濃度」の歴史
歴史としては、許容濃度→抑制濃度→管理濃度の順に古い。
・許容濃度
許容濃度は昭和34年、日本産業衛生協会(日本産業衛生学会)の中に許容濃度等委員会が設置され、昭和36年、17物質の許容濃度が発表された。
・抑制濃度
昭和46年、特化則において局所排気装置の性能の要件として労働大臣が定める値(抑制濃度)が告示された。
・管理濃度
昭和50年、労働省から塩化ビニルモノマーの管理濃度が通達された。昭和59年、作業環境測定結果を評価するための指標として、管理濃度が通達された。