産業医として勤務していて、「相談が全く舞い込んでこない」のは危機的状況にあると言えます。当初は相談があったとして、その相談が次第に減って全くなくなってしまったというのは、それはつまり今までの相談の受け方に問題があったということに他ならないと思います。
なぜ産業医に相談をするかと言えば、「産業医だからこそ相談できること、やってもらいたいこと」があるわけで、その相談者の要望に応えることができてないという状況が続くと、それは相談も自然と減っていってしまうと思われます。
つまりは、「あの産業医に相談しても仕方がない」と思われてしまっているということですね。
そこで今回は、産業医として「相談を受ける」上で意識したい3つのポイントについて書いてみたいと思います。
「何を求められているのか?」と探る
相談をされたらまず、「この人はどのような回答や行動を望んでいるのか」ということを考えることが必要だと思います。
たとえば、仕事や上司との関係で悩んでいる社員が相談にやってきたとします。そこで、「仕事っていうのはそんなもんだよ。君、仕事を舐めてるの?」なんて説教をするのはもってのほかですが、その一方で、「話を聞くだけ聞いてそれっきり」なんていうことも、相談者の希望・要望を満たしているとは言いづらいです。
受診が必要かどうかという医療的な判断を求めているのか、どのような医療機関を受診したらいいのかといった相談か、それとも人事側へ繋いでもらって動いてもらいたいのか…面談の場で話を聞きながら、どのようなことを行えば要望を満たすことができるのか、と考えていく必要があると思われます。
単に話を聞くということではなく、「この人は何を求めてるんだろうか?」と意識しながら話を聞くのとでは、やはりアドバイスなどで大きな違いが出てきます。
「問題解決まで見守る」ことの重要性
上記のように、前提として相談にくるということは「何か困っている」「何かしてもらいたいことがある」といったことがあります。
そこで、一回の面談で「問題解決、万々歳」となればいいのですが、なかなかそうはならないケースが多いです。たとえ、仕事や上司との人間関係などの問題で、人事側へと話を繋いだとしても、すぐに解決できるとは限りません。
そのため、「次回の面談」などを予定し、経過を見守り、場合によっては新たな解決策の提案などもしっかりと行うことが必要になります。
「最後まで責任を持って見守る」という姿勢はやはり重要です。これによって、信頼を得られます。
「産業医という立場」を意識
立場上「医師にしかできないこと」を求められることが多いので、その点も意識しつつ相談に乗るという姿勢も重要です。その一方で、役割分担として人事側の裁量・領域に踏み込んでしまう発言・提案などをするのは避けるべきです。
こうした役割分担を意識できていませんと、「またあの産業医は勝手に決めて…」と人事側の反感を買う可能性もありますし、人事との相談ができていない段階で安易に相談者と話をつけてしまうと、結果そのような解決策がとられずに「話が違う」となってしまう場合もあります。
ですので、「産業医という立場」を意識しつつ、越権行為などはしないよう気をつける必要はあると思います。