私も後期研修医の時は、「専門医資格を取ったら、さっさと勤務医を辞めて開業医になろう」と考えていました。その当時は、開業医の大変さも分からず、「勤務医を早く辞めたい」と思っていたからです。
ですが、そのなんとも雑なキャリアプランは「後期研修医を続けられずドロップアウト」したため、そこで途絶えてしまったわけです。そこからは、「次にどうしようか…」と分からず、しばらくバイトで食いつなぐドロッポ医生活を送っていました。
ぼんやりと「産業医になってみたいな…」と思っていましたが、なり方も分からず、また「この道を進んでいこう」としっかり進路を決められてもいませんでした。
まさしく当時の状況は、キャリアが全く定まらず、「キャリア迷子」だったと思います。そのような状況で、「産業医になろうか…」と思ってらっしゃる方というのはレアな方かもしれませんが、そこでまず考えておきたい3つのポイントについて書いてみたいと思います。
「産業医の仕事」に興味あります?
私は産業医になる前、「産業医って何をするの?」「産業医ってどんな仕事するの?」というような状態でした。もしかしたら、こちらの記事をお読みの方も同じようなところの方もおられるのではないでしょうか。
ですので、そもそも「産業医の仕事に興味はあるか?」と聞かれても、「よく分からないよ…」となるわけです。それは、「産業医になるかどうか」と悩む前段階にあると思いますので、まずは「産業医のお仕事ってなによ?」というところから脱却する必要があると思います。
では、産業医の仕事をどうすれば知れるのかということですが、私としては「産業医になるための単位が取得できる研修会・講習会」を受講してみることをオススメします。もちろん、受講すれば単位が得られるわけで、損もないと思います。
一気に50単位取得できる集中講習会で受講するのもいいですが、なかなか予約ができず、なおかつお金もかかるため、「それもちょっとなぁ…」ということでしたら、いくつかの単位が取得できる講義もあるため、そちらを受講してみるのも手だと思います。
実際、この研修・講習を受講してみて、「まるっきり興味が持てなかった」という方もいますので、結構いい確認方法なのではないかと思っています。
臨床との距離感、もう一度考えてみましょう
産業医がある程度メインの仕事になると、当然ながら臨床との「距離」は広がるわけになります。「それで本当に大丈夫?」というところはしっかり考えておくべきであると思います。
私の場合はそもそも「臨床医に向いていない」「臨床以外の働き方を探そう」ということでしたので、「臨床との距離が広がる?むしろ大歓迎」ということでしたので、全く問題ありませんでした。
もちろん、今の働き方になんらかの問題・不満がなければ、キャリア迷子にもならないでしょうし、産業医になろうとも考えないでしょうから、「働き方を見直す」必要はあるでしょう。
産業医の「デメリット」を受け入れられるか
産業医になることで、「残業もほとんどなければ、当直・オンコールもない」「時間外の問い合わせや呼び出しもない」といったメリットはあると思います。ですが、一方でデメリットもあります。
特に金銭面で、年収がダウンすることも可能性としてはあると思います。バイトである程度は補えますが、「臨床医の時ほど稼げていない」状況もあるはずで、それで家計が成り立つのかということも考えておくべき必要があると思います。
また、嘱託雇用であったりしますと、基本的には退職金なども出ず、一年契約で「次年度は契約延長しません」なんてこともあり、勤務医のドクターよりは不安定であることも認識しておくべきでしょう。
また、基本的に常勤産業医の場合は、求人が多いのは首都圏であるため、私のように関東の片田舎が地元であったりしますと、引っ越しが必要、あるいは通勤時間がかなり長くなることも可能性としてはあると思います。
こうしたデメリットがあるということは認識しておき、受け入れられるか否かということも現実的に考えておく必要があります。
ですが私の場合、現在のところ納得のいく年収がもらえており、QOMLも高く、そこそこやりがいも感じられるということもあり、今後も続けたいと思っています。
以上です。
色々と書いてきましたが、「よし、それなら産業医になろう!もう迷いはない」なんて方はなく、ほとんどの方が「これでいいのか…?」と迷いの中で転職されているのではないかと思います。
大事なのは、「産業医って仕事に興味がある」「続けられるかどうか分からないけど、やってみたい」というような部分であると思っています。もしご興味がありましたら、 リクルートドクターズキャリア[PR]の転職エージェントにご相談いただき、求人をいくつか見ることでより具体的に転職について考えられると思います。
なお、転職の具体的な方法論につきましては、『産業医になろう: コネなし・未経験の勤務医が産業医になるための方法論』という本にまとめておりますので、お読みいただけますと幸いです。