社員の「うつ病を発症した」「上司がパワハラをしている」という訴えの背後に「発達障害」がありませんか?

産業医として、職場でのメンタルヘルスに携わっておりますと、社員の「うつ病発症」や、「パワハラを受けた」といった訴えを受け、面談を行うことがあります。その中で、「実は、訴えている社員自身に発達障害の傾向がある」ということがあります。

実際、そのようなケースで受診を勧め、発達障害との診断を受けたということもありました。今回、雑誌『週刊 日本医事新報』に、「職場における発達障害者への対応と支援」という記事を読んで、改めてそのようなケースが実は稀ではないということを再認識した次第です。

たとえば、うつ病発症の件で言いますと、厳しい採用試験にパスしてきた社員が、仕事に適応できうにうつ病といったメンタルヘルス疾患を発症する場合、たしかに、直接的な原因は仕事の質や量に関係していると言えます。

しかし、その中身を具体的に調査していくと、
・定型業務が減り、突発的な業務が増えた。
・異動で、コミュニケーションを行わなければならなくなった。
・短時間に複数の業務を同時処理しなければならなくなった。
といったことに対応できないことが原因であったりします。そして、その背景に発達障害が隠れている、ということがあります。

また、パワハラの件についても、コミュニケーション能力の問題で上司と問題が起きている可能性があります。発達障害により、指示が理解できない、どうすればよいか分からないといったことなのですが、上司としては「指導をしても改めない」「何度言っても聞かない」というふうに捉え、結果としてりつける、厳しい指導をする、という事態に陥っている可能性があります。当然、険悪な人間関係となっているケースも多いです。

このようなことは、誰も望まない不幸な結果と以外何物でもないでしょう。人事労務担当者としては、このようなケースであればやはり速やかに産業医に相談し、産業医から発達障害に詳しい医師の外来を受診勧奨するという流れに持っていくべきでしょうね。

当然、全てのケースで発達障害が問題であるとは言いませんが、そのようなことも背景に隠れている可能性がありますので、人事労務担当者、産業医は注意する必要があると思われます。

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