初期研修を終えた後、すぐに若手医師が美容外科医になるという「直美」が昨今では問題とされているようですね。では、直美ならぬ「直産(直で産業医)」はどうなのかと言いますと、私としてはあまりおすすめできないかな、と思っています。
と言っても、私も後期研修医として数年勤務して、認定内科医資格をとったものの専門医にはなれていないレベルですので、偉そうなことは言えませんが、それでも「専攻医に一度はなった方がいいんじゃないかな」と思うわけです。
その理由について、今回は3つに分けてご説明したいと思います。
理由1 産業医の業務上で知識・経験が必要となる
産業医の業務としては、「別に診療をするわけでもないから、別に臨床経験はいらないんじゃないの?」と思われるかもしれませんが、意外と必要となる場面が出てきます。
健康相談を希望する(本人だけではなく、人事からの要望で面談もありますが)社員さんが、「最近、頭痛がひどくて…」というような場合、やはり基礎的な鑑別は一通りできる必要があります。
痛みの部位(前頭部、側頭部、後頭部)や、前兆はあるのか、なんらかの既往歴はあるのか、家族歴はどうか…などなど問診で聴取できる情報はしっかりと聞いた上で、「では、これからどうすべきか」といったアドバイスをする必要があります。

また、主治医の診断書や意見書を読み解く上でも知識や経験は必要ですし、その内容を人事側へと「翻訳」してフィードバックする必要なども出てきます。また、微妙なニュアンスで「なるほど、主治医はこう考えてるんじゃないかな」と、行間を読むといったことも時には必要で、そこでは臨床経験が大いに活きてくるようにも思います。
理由2 転職する上で有利に
元・内科医のドクターであったりしますと、社内に「診療所」があるような求人で、ある程度は採用面で有利に働く、ということもあります。また、求人では「健診業務も兼任してもらいたい」というところもあって、そうした時にもある程度は有利かな、とも思っています。
元・精神科医であれば、最近で言えばメンタル不調者も多いため、「ぜひウチで休職者の対応を」と歓迎されるケースもあったりします。
また、企業の中には「臨床経験を重視するため、10年以上臨床経験がある方を歓迎します」というところもあります。採用面で言えば、臨床経験はプラスに働くことも比較的多いのではないか、とも思います。
理由3 バイトの選択肢
常勤産業医であっても、会社がNGを出さなければ「臨床のバイトをしている」というドクターは多いです。その場合、「とりあえず、一般内科の外来は一人で担当できる」レベルであれば、格段にバイトの選択肢の幅は広がると思います。
このあたり、やはり最低でも「外来を経験している」「救急対応は一通り学んだ」「当直で、急変にも落ち着いて対応できる」といったことですと、時給にも大きな違いがあるのではないでしょうか。
産業医の業務に直接は関わらないポイントかとは思いますが、年収に関わってくるところです。「将来は産業医になる」と早々に思っていたとしても、「バイトのため、頑張って経験しておこう」といったことでモチベーションを上げてしっかりと取り組むことも重要だと思います。
以上となります。
「直産」ではなく、やはり専攻医となった臨床経験をある程度は積むことは必要ですし、5~10年ほど臨床を経験してからでもいいのではないか、と思います。その上で、リクルートドクターズキャリア[PR]などのキャリエージェントに求人紹介を受けてみてはいかがでしょうか。

