私は産業医として勤務しており、現在の会社は3社目となります。会社との雇用契約の内容はそれぞれ結構異なり、契約書を見比べてみると結構面白かったりします。
そんな中、m3.comの動画「医師が損する「通勤費自腹」病院、横行のワケ」で知ったのですが、医師の「通勤費自腹」という病院も「全体の30%程度ある」ということに驚きました。
私も会社によっては「年俸で交通費はその中に含むということにしてください」というところもあったのですが、病院で約3割が交通費を払わない、という契約にしているのは意外でした。
病院側の事情 その1「採用力」
「通勤費自腹」ということにすると、病院側にどのようなメリットがあるかと言いますと、「年俸が高く見えて、採用力につながる」ということになります。
「年俸1500万円」というA病院と、「年俸1450万円」というB病院。年俸以外にあまり違いがないなら、どちらに勤務したいかと言えば、「年俸の高いA病院」という方もおられるでしょう。
ですが、A病院は「交通費・学会参加費は年俸に含む」、B病院は「交通費・学会参加費は別途支払い」だったりするわけです。この点、交通費などの諸経費を含んだ額にしておきますと、「年俸が高く見えて、医師が食いつきやすくなる」というわけです。
この点、交通費・学会参加費などの諸経費が込みなのか、別途支給なのかで所得税・住民税などが変わり、実質の手取りに差が出ることもあります。「年俸の額面はA病院の方が上なのに、手取りではB病院の方が上」なんてこともあるわけです。
病院側の事情 その2「交通費支給にまつわるコスト」
病院側にとって、「通勤費自腹で年俸に含む」とすると、もう一つのメリットがあります。それは、別途支払いをすることによる手間やコストを省くことができるわけです。
「申請をしてもらい、その額に見合った交通費、学会費用を支払う」ということを病院側のスタッフが行う場合、やはり手間がかかります。この分もやはり病院側にとってコストになるわけで、「それなら年俸にコミコミにしてくれた方が簡素化できて一石二鳥」というわけです。
結局は医師側の「納得感」
採用面接や、雇用契約を結ぶ際に「交通費は含む形で」といった説明は病院側からあるはずでしょうし、雇用契約書にもそのように書かれているのだと思います。
ですが、その説明をあまり意識しておりませんと、後になって「他の病院は交通費支給してるはずなのに、なんでウチは…」と損をしている気持ちになってしまうのだと思います。
また、「年俸いくらで」というところばかりを意識して、「交通費は含む」ということの税制面でのデメリットを考えていなかったりすると、「うわ、手取りで損をしていたんだ…」と後で気づいて後悔をするということもあるだのと思います。
要は、入職前にその点を考慮しているかいないかというところは大きく、「納得できるか否か」というところにつながるのだと思います。採用面接などでの年俸交渉ではぜひこうした点を念頭に置いておいた方がよろしいかと思います。
なお、エムスリーキャリアもしくは、リクルートドクターズキャリア[PR]などの転職エージェントから求人紹介を受けていれば、「交通費は別途支給か否か」といったことは、求人への応募前に知ることは可能です。また、交渉してもらうことも可能だと思いますので、ドクター側は無料ですし、サービスをご利用いただいてはいかがでしょうか。