問題社員に「お目付け役」という名の上司ができてしまったことで起こりうるトラブル【産業医マニュアル】

50代男性、診断はされてはおりませんが、恐らく発達障害圏の方で「空気の読めない言動・態度・行動」が問題視されてきておりました。

さて、そんな彼が飲酒後に階段から転倒、頭部をしたたかに打ったことで救急搬送されました。結果、病院側からの診断書を含む情報提供で、うつ病、アルコール依存症であったことが判明します。

そのようなことがあり、産業医としての介入を求められ、さらには半ば閑職で「時間があれば居眠り」していたような状況でしたが、(年下の)上司が「お目付け役」としてしっかり管理をすることになりました。

居眠りができないように業務量のコントロールや、進捗状況の報告などをしてもらうようになりました。また、今まで同僚に対して行っていた、問題となるような言動・行動も注意されるようになり、「しっかり挨拶するようにしましょう」「フォローしてもらったらお礼を言いましょう」など、一般的な社会人としてのマナーについても指導されることとなりました。

今まで暇さえあれば居眠りできて、ほとんど期日もないような仕事をテキトーにできていたのとは、180度変わった生活になり、さてどうなったかと言えば…当然のことながら、耐えきれずに「うつ病の症状悪化」を理由に欠勤が続くようになってしまいました。

不幸なことに、「お目付け役」ができて、さらには上司が張り切って監視・指導を厳しくすればするほど、彼は会社から足が遠のいてしまう、というわけです。

さて、このようなケースが起こってくだんの上司から相談を受けたわけですが、話を聞いて「なるほど」と思ったわけですが、なかなか解決策の提示というのが難しかったわけです。というのも、「前のように、暇でテキトーな仕事の状態に戻れれば彼は喜んで戻ってきますよ」とはなかなか言えないからです。

ただ、暗に上記のような理由を上司に説明したところ、一応「なるほど」と言ってもらえて、今後は監視を(周囲の社員の士気に関わらない程度で)あまり厳しくしすぎないことや、業務量を極力減らし、業務負担軽減を図ること、などを復帰時の留意点としていただけるようになりました。

「お目付け役」の出現によるトラブルは、上司が変わったタイミングなどでも起こりやすく、「さて、どのように対応しようか…」と、産業医としても非常に悩ましい問題の一つのような気がします。

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