睡眠時無呼吸症候群治療の代表である「CPAP」ですが、よく聞く外来での患者さんの訴えで、「これ、いつまで続ければいいんですか?」というものがあります。要は、「いつまで続けるつもり?もうやめたいんだけど」ということですね。
これに対して、「CPAPはメガネと同じとお考えください。メガネは、裸眼視力を改善させる効果はありません。あくまでも、かけている間だけ視力矯正をするものです。CPAPも、やめてしまえば元の状態となってしまいます」と説明した上で、「使うのが煩わしいと思いますが、ぜひ健康のために続けましょう」と励ましています。
そうするといつも、納得したのか、していないのか分からない微妙な表情で「分かりました…続けます」といったお答えをいただくのですが、もっと上手い対応はないものか、と思案しておりました。
そんな中、Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism誌に「Obstructive Sleep Apnea Dynamically Increases Nocturnal Plasma Free Fatty Acids, Glucose, and Cortisol during Sleep.」という論文が掲載されました。
この結果ですが、
・CPAP療法を中断するとOSAの再発がみられる。
・低酸素血症や睡眠障害、心拍数の上昇が再び現れる。
・血糖値と脂肪酸やコルチゾールの血中濃度が有意に上昇し、OSAの重症度が高い患者でこれらの数値が大きく上昇する。
・収縮期血圧や全身の血管の硬化度を表す指標(augmentation index)も上昇する。
とのことです。要は、「元の木阿弥となってしまう」ということですね。
ですので、「やめると、こんな悪い影響がまた現れる可能性があります」とご説明することも重要ですね。「実際に、CPAPをやめてみた人の研究結果で、悪い影響がありました」と言うことができるので、この研究論文をもとにご説明すると、ほんの少しは「分かりました」という表情が微妙ではなくなるのではないでしょうか(笑)