当サイトへも、産業医って「どうやってなるの?」といったキーワードでやってこられる方もおられます。私自身、学生・初期研修医時代に習った覚えもなく、転職を考えてようやく調べだした口ですが、当時はあまり詳しく書いているサイトもなく、手探り状態で一つ一つ調べていったのを覚えています。
そこで今回は改めてですが、「産業医って、どうやってなるの?」という質問について、基礎的な知識が全くなかった当時のことを振り返りつつ、分かりやすく回答してみたいと思います。
産業医になるために必要な条件とは?
まず前提として、産業医になるには「医師」である必要があります(なにを当たり前のことをと言われるかもしれませんが、ご存知ない方もおられるため)。そして、ここが重要なところですが、医師であれば誰でも産業医になれるというわけではなく、産業医になるための「必要な条件」があります。
その「必要な条件」は、
こちらにもまとめておりますが、
1) 労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識についての研修であって厚生労働大臣の指定する者が行うものを修了した者
2) 産業医の養成等を行うことを目的とする医学の正規の課程を設置している産業医科大学その他の大学であって厚生労働大臣が指定するものにおいて当該課程を修めて卒業した者であって、その大学が行う実習を履修した者
3) 労働衛生コンサルタント試験に合格した者で、その試験の区分が保健衛生であるもの
4) 学校教育法による大学において労働衛生に関する科目を担当する教授、准教授又は講師(常時勤務する者に限る)の職にあり、又はあった者
5) その他厚生労働大臣が定める者労働安全衛生規則第14条の2
のいずれかを満たす必要があります。この記事をお読みいただいているのが「一般的な臨床医のドクター」であることを想定しますと、「1) 労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識についての研修であって厚生労働大臣の指定する者が行うものを修了した者」を満たすのが最も現実的であると思います。
認定産業医の資格を取得するにはどうすればいい?
上記の通り、一般的な臨床医のドクターが産業医になるためには、「認定産業医」になる必要があるわけですが、その「認定産業医」の資格はどのように取得するには、研修会を受講して「50単位」集める必要があります。
しかも、その「50単位」はなんでもいいわけというわけではなく、
・前期研修:14 単位以上
・基礎研修会 実地研修:10 単位以上
・後期研修:26 単位以上
これら合計50 単位以上
を取得する必要があります。
研修会は、
に掲載されていますが、研修はそれぞれ「基礎研修」「生涯研修」に分かれています。
・基礎研修=認定産業医に「なるため」に必要な単位
・生涯研修=認定産業医の「更新」に必要な単位
であるため、ご注意下さい。つまりは、生涯研修の方を受講しても50単位にはカウントされず、「基礎研修」の方を受ける必要があるわけです。
なお、コツコツと個別に研修会を受けて単位を集めるのも手ですが、一方で数日間の「集中講座」を受講して50単位を集める方法もあります。集中講座については、
にまとめておりますが、基本的には
・産業医科大学
・東京医科歯科大学
・岡山大学
が開催しています。ただ、どの講座も人気で受講人数が限られていることもあり、予約するのは難しい上に、数日間に渡り「受講する時間を作る」、10万円程度の受講費用がかかるという難点があります。
認定産業医になるための申請方法と注意点は?
やっとのことで50単位を集めた…というだけでは、認定産業医になれるわけではありません。医師会に申請を行う必要があります。
・認定産業医新規申請書(医師会にありますので、そこで記入しましょう)
・医師免許証の写(医師会員は不要)
・単位シールを貼った産業医学研修手帳(I)or 産業医科大学産業医学基本講座修了認定書 or 産業医科大学産業医学基礎研修会集中講座修了認定書など
・審査・登録料1万円
を揃え、所属している医師会、所属していない場合は最寄りの医師会へ申請しに行きます。それで申請が通れば(数週間程度はかかります)晴れて認定産業医となります。
注意点としては、
・シールをなくしてしまうと、再受講が必要となる。シールや手帳を紛失しないように要注意。
・基礎研修最終受講日から5年以内に1回限り申請できる→50単位集めたらすみやかに申請を。
ということがあります。
なお、認定産業医の資格は「5年間」であり、更新が必要です。ですが、認定産業医の資格を喪失しとしても産業医として勤務は可能です。
「産業医として働く」ために必要なこと
認定産業医の資格を取得したとして、それはあくまでも「産業医になる資格がある」という状態です。つまりは、「産業医として働く」ためには、企業に「産業医として雇われる」必要があります。
企業に採用されるには、転職活動を行わなければならず、基本的には求人に応募→書類審査→一次・二次面接というプロセスがあります。
私自身、「二次面接で落とされる」ということを何度となく経験しており、一度の転職活動で複数社受ける方が多いと思います。
また、産業医の働き方としては、大きく分けて「常勤」もしくは「嘱託」の方法があります。「臨床医から転身し、主に産業医として働く」場合は常勤の産業医となります。
産業医になるための転職活動の実際とは?
産業医になるためには、そもそも求人情報を集めてきて、応募を行う必要があります。その求人情報ですが、やはり自分で見つけてくるのはかなり難しいです。
さらに言えば、産業医未経験ですと経験者に比較して分が悪いため(経験者を優先採用する企業も多い)、「未経験者でもOKの求人を探してくる」ことはかなり難しいです。
そこで基本的には、リクルートドクターズキャリア[PR]などに登録し、転職エージェントに求人情報を教えてもらうことになると思います。
この方法のメリットとしては、
・求人を探す手間が省ける。
・ネット上に公開される前の求人情報を、優先的に教えてもらえる可能性がある。
・採用面接に同行してくれたり(特に転職活動の経験に乏しいと、心強かったりします)、企業個別の面接対策について情報をもらえる。
・応募前や面接後の質問、条件交渉などを代理でやってもらえる。
・ドクター側は無料でサービス利用ができる。
・入職後、条件面などについての「話が違う」といったトラブルにも相談に乗ってもらえる。
といったことが挙げられます。特に産業医未経験の時の転職では、サービスを利用した方がいいと思います。
私自身、転職のたびにお世話になっているのが、リクルートドクターズキャリア[PR]です。求人数の豊富さもさることながら、過不足なく寄り添ってサポートしてもらえるので、毎回利用させてもらってます。
「産業医未経験」で転職活動が上手くいかない時の対処法
産業医経験者でも、転職活動が上手くいかないこともあり、未経験であるとさらに難しくなる可能性があります。
そんな時、どのように対処すればいいのかということですが、まずは以下の点をチェックしてもらうのがよろしいかと思われます。
・そもそも求人数が少ない「閑散期」に転職活動をしている→1月、4月、10月入職に向けて転職市場は活発化する傾向にあります。それ以外の閑散期では上手くいかない可能性があります。
・産業医の求人は大企業の存在する首都圏(東京・名古屋・大阪など)に集中する→地方では求人数自体が少ない可能性がある。
・希望条件が高すぎる可能性→臨床医時の年収を基準に考えると転職できない可能性がある。まずは「産業医としての経験を積む」ことを優先させることも検討。
・転職エージェントとの希望条件面での認識のズレがある→まずは一度、転職エージェントと今後の方針について話し合う必要がある。
・採用面接対策の不足→「産業医になろうと思った動機」「志望動機」「産業医として働く上でのアピールポイント」など、よく質問される内容についてはしっかりと回答を練っておく。