常勤産業医の仕事とは?主な業務とその具体的な内容を分かりやすく説明します

「産業医」と言いますと、「企業で働いてる医者でしょ」とぼんやりとは分かるかもしれませんが、「では、産業医って具体的にどんな仕事をしてるの?」と質問した場合、答えられますでしょうか?

特に産業医経験がない臨床医の先生方は、なかなか「こういうことをやっている」と答えるのは難しいのではないでしょうか。実際、私も産業医になる前は説明できなかったと思います。

そこで今回は、「こんな仕事をしてるんですよ」ということを具体的に書いてみたいと思います。なお、企業によって産業医の業務は異なる部分も多いと思いますので、ここでは「オフィスワーカーがメインで在籍している企業」を想定します。

業務1 面談

オフィスワーカーの多い企業での業務としては、「面談」がメインとなっていると思います。特に最近ですと、「メンタル不調による休職者」が多くなっている傾向にあり、頭を悩ませる企業は多いです。

採用面接でも、「メンタル不調者の対応はできますか?そのご経験は?」と質問されることも珍しくありません。ほぼこの対応が産業医のメインの仕事となっている企業もあります。

こうした「面談」については、目的がそれぞれ異なっています。主に以下のような種類の面談があります。

健康相談

「健康や体調」について相談をしに来る方の面談になります。一番、多種多様な相談内容となるのがこの面談です。長年産業医をやっていますと、本当に様々な相談事が舞い込んできます。相談者や、面談を依頼してきた上司・人事の「意図」を見誤ると的外れな面談になりかねないので、その点は注意が必要であったりもします。

具体的には、「こういう症状があるんですけど、どんな病院の何科を受診したらいいんでしょうか?」という相談から、「実は◯◯と診断されまして。今の業務負荷だとしんどいので、その相談をさせてください」という相談もあります。

あるいは、メンタル不調で休職前に面談をすることになったり、「メンタルクリニック受診を考えているのですが、悩んでいます…」という方の受診の後押しをすることもあります。また、本人だけでなく、メンタル不調で休みがちの部下を心配した上司が相談に来るということもあります。

復職可否判定面談

休職者の方が復職するにあたって、「実際に復職することが可能なのか」と産業医として判断したり、「復職する上で、どのような就業制限や配慮が必要か」と考えるための面談となっています。

基本的には、主治医の「◯日から復職可能」といった診断書を事前に提出してもらい、その上で「復職可能か」といったことを判断することになります。

メンタル不調者の場合、「復職可能」と主治医に判断されていながら、実際は「昼すぎにようやく起きてます」「ほぼ日中は家にいて、昼寝しちゃってます」といった方も中にはいますので、その時には「朝、起きるようにしましょう」「日中はある程度、外に出て活動できるようにしましょう」といった指示をして、「ではまた2週間後に面談しましょう」と復職を延期する必要な方もいたりします。

最終的には会社側へ判断、その根拠や就業制限・配慮の必要性などについて説明して、どうすべきかについて相談を行います。

長時間勤務者面談

「残業が月80時間を超えている社員」などの長時間勤務者を対象に、「体調面で問題はないか」「業務負荷を軽減するのにどのような配慮が必要か」「このまま勤務を継続して大丈夫か」といったことを聴取するための面談となっています。

基本的には、「現在、体調不良は感じていないか」「現在、通院中の疾患はあるのか」「一時的に多忙となっていたのか、今後の業務の状況の見通しはどうか」「メンタル不調の兆候はないか」といったことを面談の中で聴取していき、意見書を作成して会社側へ提出します。

高ストレス者面談

ストレスチェックを受けて、特に高ストレス者と診断された社員の中で希望している社員に対して行う面談となります。

どのようなストレスの要因があるのか、体調不良は自覚しているのかなどを聴取して、受診勧奨をしたり、就業上の制限・配慮などを検討していくことになります。こちらも意見書を記入して会社側へフィードバックを行います。

以上が基本的な面談内容となります。やはり最初の内は、「なんて言えばいいんだろうか…」「面談後にどうすればいいんだろうか…」などと悩むかとは思いますが、慣れればフローが自然と分かって「こうきたら、こうだ」となり、対処はそんなに難しくないと思います。

業務2 安全衛生委員会への出席

こちらは法定業務となっており、月1回、出席することになります。議題について意見を求められ、話をすることになりますが、基本的には進行役の衛生管理者が「今月の労災は…」「長時間勤務者数は…」などと報告することがメインであり、淡々と議論なく進んでいくことが多いと思います。

「産業医講話をお願いします」と、毎月、なんらかのテーマを決めて5分ほどの話をすることを求められることもあったりします。実際、私はパワポで資料を作って毎月、講話を行っています。

なお、支社や関連会社の産業医も兼任することもあり、その場合はその事務所で開催する安全衛生委員会の出席をすることになります。その時本社で行った「講話」の資料があると、支社などでも話をしやすいというメリットがあります。

業務3 職場巡視

こちらも法定業務となり、基本的には月1回(条件を満たせば、2ヶ月に1回)職場を巡視、安全・衛生上で問題はないかということをチェックしていきます。

具体的には、「非常避難口の周囲に物が置かれていないか」「キャビネット上に、落下して危険なものは置かれていないか」「照明の明るさに問題はないか」「室温・温度などは適度に保たれているか」「コンセント付近にほこりは溜まっていないか、タコ足配線をしていないか」…などを確認していきます。

「職場巡視チェックシート」がありますと、漏れなく確認できますので、衛生管理者と協議して作っておくとよろしいかと思います。

なお、こちらも支社や関連会社の産業医を兼任していますと、出向いて職場巡視を行うことになります。

業務4 健診判定業務

健康診断の結果をチェックして、「就業可能かどうかの判定」「受診勧奨が必要な人の洗い出し」「受診勧奨→受診後の結果についてチェック」などと行っていきます。

これは社員数によって業務ボリュームが大きく異なり、全国規模の大企業ですと、本当にこの業務が多くて、「毎日、判定業務をし続ける」ということにもなります。1000人規模の企業ですと、さほど時間はかかりません。

なお、中には受診勧奨をしても、「なんで受診なんかしなきゃいけないんだよ。こっちは忙しいんだよ」などとごねる社員さんもいたりして、保健師さんに依頼されて、面談で説得をするという役回りを仰せつかるということもあります。

一般的な産業医の業務としては、以上となります。
やはり企業の規模によって、「1日の面談件数」「兼任する支社や関連会社の数」「健診判定の件数」が大幅に異なりますので一概には言えませんけども、忙しくて目が回るということはなく、余裕をもって仕事はできると思います。

もしこうした仕事にご興味がありましたら、リクルートドクターズキャリア[PR]にご相談いただければ、無料で求人紹介はしてもらえますので、まずはお問い合わせしてみてはいかがでしょうか。

【2024年度版】常勤産業医になるための完全ガイド(認定産業医になる~転職活動まで)
「産業医として働く」ということで言いますと、大まかに言って、一つの企業で常勤の専属産業医として働くのと、非常勤で嘱託産業医として働くという2つの形態があります。 簡単に言ってしまえば、「常勤」ですと雇われている企業に出勤してそこで働くことに...
【2024年版】「専攻医/後期研修医をやめて産業医」になろうと考えている若手医師へのアドバイス
私自身、最初から産業医を目指していたわけではありません。そもそもは内科の後期研修医になり、「まずは専門医資格を取得して開業しよう」と考えていました。ですが、その途中でドロップアウトし、そこからは産業医として働いております。 だからこそ、同じ...
タイトルとURLをコピーしました