産業医が「医師がセカンドキャリアで選ぶ閑職」ではなくなりつつある昨今の実情

私が後期研修医をドロップアウトし、「産業医になろうと思っている」と報告した時、両親や周囲の医師の反応としては、「産業医?若いんだから、今はもっと臨床を頑張って、それからなってもいいじゃない」といったものでした。

要は、産業医=医師がセカンドキャリアで選ぶ閑職というイメージであり、「臨床経験を十分に積んで、それから考えればいいじゃない」という意味合いだったようです。

30代の頃、入職した企業で「産業医です」というと、「え?まだ若いのに?」という反応をされた社員さんも結構おられました。

ですが、現状ではその状況も変わりつつあります。

企業側の望む「産業医像」

まず、企業側の要望としては、「こちらの話をよく聞いてくれて、フットワーク軽く動いてくれる人を希望」「産業医を採用・雇入れするのもコストがかかる。ある程度、長く働いてくれる人を希望」といったものがあります。

ですので、あまり高齢で60歳近くのドクターというよりは、「30代~50代前半の医師を希望する」という企業は多いように思います。

つまりは、「臨床医としての終わりも見えてきて、セカンドキャリアで産業医を選ぶ」というのがなかなか難しい現状になってきていると言えます。

業務内容の変化

最近ですと、メンタル不調者の対応というのがメインとなりつつあります。そこで言うと、比較的若い社員さんたちと同世代で、「働く人たちの心情」が理解できるということは重要な要素であると思われます。

当然、高齢のドクターが理解できないということではないでしょうが、会社での上司・同僚との関係性、家庭との両立の難しさ、子育てなどの要素が悩みのタネとなっている場合、やはり同世代の方が理解はしやすいのではないでしょうか。

こうした業務内容の変化においても、「やはり、産業医の採用について年齢を考慮する」要因の一つではないか、と思っています。

いつ「産業医の道」を選ぶか

では、いつ「産業医の道」に入るのかというと、なかなか一概には言えず、難しい問題ではあります。私の場合は、「臨床医、向いてない」と早々に見切りをつけてしまったので、現在の職についているということになりますが、なかなかそのような人ばかりではないと思います。

ただ、私の経験で一つだけ言えることは、初期研修後に内科系の後期研修医になって、少なくとも「臨床医を経験」することはできましたし、そこから「産業医も経験してみた」ことで現在があると思っています。

「産業医、合わないな」と思っていたら、恐らく、また別の道を試しにいっていると思います。「産業医、やってみたけど合わなかった。やっぱり臨床医がいいかも」と思って出戻るドクターもいます。

ですので、「まず気になったら試してみる」ということを若い内にやっておくことも一つの経験としてプラスになると思いますし、産業医を経験することは臨床医としても決して無駄なことではないと思います。

もし産業医への転職にご興味がありましたら、エムスリーキャリアや、リクルートドクターズキャリアなどの転職エージェントに相談をし、求人紹介を受けてみてはいかがでしょうか。

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