労働衛生コンサルタント口述試験で、「許容濃度と管理濃度の違いは?」というのもよく出題される質問です。ですが普段、これらのワードに馴染みのない産業医にとってはなかなかややこしい質問です。
ですが、これを答えられないとなりますと、「また来年チャレンジだね」という面接官の視線を感じることは不可避というほどの基礎レベルの質問です。
そこで今回の記事では、全く業務に関係ない勤務医・産業医の皆さんにしっかりご理解いただけるよう、できるだけ分かりやすく噛み砕いで解説したいと思います。
「許容濃度と管理濃度」の歴史
定義の前に、まずはそれぞれ許容濃度/管理濃度がどのように出てきたのか、どのような目的出されたものなのかを押さえておいた方がイメージを持ちやすいと思います。
・許容濃度:昭和34年、日本産業衛生協会(現在の日本産業衛生学会の前身)で許容濃度等委員会が設置される。昭和36年、17物質について許容濃度が勧告され、以後、対象物質が追加されるなどして現在も改定されている。
許容濃度の勧告(許容濃度)
許容濃度は、簡単に言ってしまえば、日本産業衛生学会が「有害物質を取り扱う職場で、このぐらいの濃度であれば健康障害を起こさないのではないか」という指標です。あくまでも学会が出している指標ですので、許容濃度の法的規制はありません。
・管理濃度:昭和50年、労働省から塩化ビニルモノマーの管理濃度が通達されたのを皮切りに、昭和59年、作業環境測定結果を評価するための指標として管理濃度が通達された。
作業環境評価基準 別表(管理濃度)
管理濃度は労働省大臣(現 厚生労働省大臣)が勧告しているものであり、「作業環境測定結果を評価するための指標」として出されているわけです。そこから管理区分が決まるわけであり、許容濃度とは違って法的規制があります。
では次に、許容濃度/管理濃度の「定義」について学んでおきましょう。
「許容濃度と管理濃度」の定義
それぞれの定義は、
・許容濃度:1日8時間、週40時間程度働いても平均曝露濃度がこの数値以下であれば、大多数の労働者が健康上の悪影響が見られないと判断される濃度のこと。
つまりは許容濃度は、有害物質を扱う職場で、法定時間働いても「大多数の労働者が健康上の悪影響がない」と判断される濃度です。
・管理濃度:有害物質に関する作業環境の状態を評価するために、作業環境測定の結果から管理区分を決定するための指標。
つまり、管理濃度は「作業環境測定結果→管理区分」を決定するための指標なっています。厚生労働大臣が告示者となっているということもあり、結果が悪ければ(第3管理区分)行政指導の対象となるなどの法的規制のための指標です。
口述試験で質問されたら、特に定義の部分について説明するだけでOKだと思いますが、どのような背景で出てきたものなのかを押さえておきますと、理解も深まると思います。
ちなみに、追加されやすい質問として、
・許容濃度はどこが勧告しているものか?→日本産業衛生学会
・管理濃度の告示者は誰か?→厚生労働大臣
・管理濃度はどこに示されているか?→作業環境評価基準の別表
があり、併せてしっかり覚えておきましょう。
なお、労働衛生コンサルタント試験の勉強におけるポイントについてまとめた、
産業医のための労働衛生コンサルタント口述試験対策マニュアル: 一発合格するための秘訣
頻出問題の紹介と解説を行った、
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