私が後期研修医の時に、「産業医になろうと思っている」と打ち明けたとき、先輩医師や両親からも同じような意見を言われました。
「産業医は年とってからもできる。若い今の内に、臨床医としての経験を積んでおくべきだ。臨床医として研鑽を積むのは、若手でないと難しいのではないか」
一般的に、「常勤産業医は勤務医が定年間際にやるもの」というイメージがあるからこそ、こうした意見を言われたのだと思います。ですが、「臨床医を続けていくのは無理(というか、もうやりたくない)」と思っていた私は、産業医以外の選択肢もあまりなかったため、常勤産業医に転職することになりました。
こうした立場からしますと、私としては「高齢になってからではなく、若い内に転職するのもアリ」であると思っています。そこで今回は、若手医師が常勤産業医になる上での、「年齢」にまつわるメリットについて書いてみたいと思います。
「未経験+高齢」での転職の難しさ
産業医未経験ということになりますと、「いきなり産業医一人…以上」という環境での業務ということになると、どのように仕事をしたらいいのか分からない、ということもあるのではないでしょうか。
では、「他に産業医が勤務しているところを」という話になるかもしれませんが、そうなると今度は、「統括産業医が年下」というようなことが問題となります。いわゆる「上司が年下」といったことになり、統括産業医が「それはやりづらいからNG」と、採用が見送られるということになるわけです。
ベテラン医師の年収問題
平たく言ってしまえば、企業側の考えとしては、「産業医の年収=コスト」ということになります。本音で言えば、「コストはあまりかけたくない」というところでしょう。
そうした観点で考えれば、年収が高くなりがちなベテランドクターと年収をある程度抑えられる若手ドクターだったら、どちらを雇うか、ということを考えれば、自明の理だと思います。
採用コストの問題
こちらも企業側のコスト意識になってくると思いますが、産業医を雇うにもコストがかかります。その点、「一度雇ったら、長く働いて欲しい」という希望が企業側にはあります。
となりますと、至極簡単に言ってしまえば、「年齢が高い医師=勤続年数が短くなる」ということになります。その場合、「60歳で10年働くAドクターと、40歳で20年働くBドクターだったら、どちらを選ぶか?」という問題となり、「それならば若手の医師を雇いたい」ということにもなると思います。
こうした採用にかけるコストの面で考えても、やはり高齢になってから常勤産業医への転職を考えていくのは難しいという理由になっています。
社員の年齢との兼ね合い
ベテラン医師が産業医になる場合、やはり雇う企業の社員側からすると、「仕事を頼みづらい…」「相談したいけど、気軽に声をかけていいものなのだろうか…」と思う可能性もあります。
この点、若手医師ですと、その医師のキャラクターにもよりますが、「気軽に相談しやすいな」と感じてもらえる傾向にあると思います。
産業医同士、あるいは産業医と保健師の人間関係において、「年齢差」というの関係しているとは思いますが、一方、社員と産業医における人間関係においても、年齢差は一つの重要な要素であると思います。
このような点からも、採用で言えばベテラン医師よりも若手の方に軍配が上がるという傾向はあるように思います。
ライフステージの問題
結婚をして、子供が生まれるというライフステージの変化に伴い、やはり「転職」、特に家庭内において「勤務医から産業医へ」という転職の理解を得ることはハードルが高くなります。
奥さんからの理解というのもなかなか得にくいでしょうし、「頑張って勤務医のキャリアを積んできたし、今の方が稼ぎが良い。なんで今更、産業医に転職するの?」と言われてしまう可能性もあるわけです。
また、子供がいれば経済的な負担も増え、さらには子供の進学を控えていたら、「求人の多い東京に引っ越そう」「内定先に近いところに引っ越そう」ということも、おいそれとしにくくなっていきます。
以上です。
もちろん、「常勤じゃなくて、嘱託産業医で何社か担当してお小遣い程度稼げればいいよ」という方もいらっしゃると思います。
その場合は年齢はあまり関係ないでしょうけども、常勤はやはり話は別になると思われます。もし現在、「興味はあるけど…」と悩んでおられるようでしたら、上記のような理由で、産業医への転職を早めにご検討いただくのもよろしいかと思います。
まずは、リクルートドクターズキャリア[PR]などに相談をして、求人紹介を受けてみてはいかがでしょうか。実際の求人を見ることで、より具体的に考えやすくなるのではないかと思います。