産業医と言いますと、「当直・オンコールから解放される」「診療しなくていい」「残業もない」「退屈なカンファレンスもない」という印象をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。ですが、産業医にも、産業医なりに苦労することがあります。
今回は、「産業医になる上で覚悟しておきたい4つの苦労」と題して、産業医としての辛さについて知っていただければと思います。
1) 企業の業績に年収が左右される・不安定
病院勤務ですと、いくら科の収益が低くなったとしても、減収されるということは少ないでしょう。また、年齢や勤続年数により着実に年収upが見込めるのではないか、と思われます。
しかしながら、産業医ですとそのようにはいきません。企業の業績によって年収は左右され、極端に減収すれば今まで通りの年収がもらえるかは分かりません。さらに言えば、「もっとリーズナブルな医師を」ということで、クビを斬られるかも分かりません。
また、産業医は基本的には1年契約です。1年で契約終了となることは稀でしょうが、3年目に更新を行ってもらえるかどうかは不明です。その点、病院勤務よりは不安定とお考えいただいた方がよろしいでしょう。
2) 人事労務・社員と密なコミュニケーションを要求される
患者さんや、そのご家族とのコミュニケーションというのも、医師として大事なことではあると思います。しかしながら、患者さんご自身の生活環境などについて、病状以外に密に知る必要はそれほどないと思われます。
ですが、産業医ですと病気を抱える社員さんの生活環境、家族の問題、仕事場での複雑な人間関係などについても根掘り葉掘り聞き、知っておかねばなりません。さらには、それを踏まえた上で、企業側の人事労務担当者と相談をする必要があります。
正直、私自身もここまでコミュニケーションをとらなければならないとは思いもよりませんでした。当然、社員さんの情報を得るには、時間をかけてじっくりと話をし、信頼関係を築いた上で質問しなければなりません。「傾聴」は医療の基本だと思われますが、それが苦手な方は産業医としてやっていくには厳しいでしょう。
3) 社員側・企業側の意見の調整能力が必要
社員、企業の双方にそれぞれの意見、思いがあると思われます。それをそのままぶつけ合っているのではまとまりません。そうした異なる意見のぶつかり合いにおいて、調整する役目も産業医が負っていると思われます。
もちろん、異動や就業措置などについては企業側が実際に決定するわけですが、それに関して意見を求められたり、社員の要求がどこまで認められる(べき)かといったことも判断して企業側に伝える必要があります。
時には、双方に挟まれ、板挟みになることもあります。そうした場面で、しっかりと調整する能力が産業医には必要であると思われます。単に企業側へ「就業措置の勧告しといたから、あとよろしく」というふうにはいかないわけです。
4) 言うことを聞いてくれない社員もいます
保健指導を行っても、まるっきり耳を貸さない社員さんもいます。特に、糖尿病や高血圧など、生活習慣病にまつわる指導を行っても、受診もしないし、生活習慣を改めることをしないなんてこともあります。
また、就業上、必要と思って時間外勤務の制限を勧告しても、まるっきり無視なんてこともままあります。
そんな時、どうするべきかと言えば、あきらめずに説得しつづけるよりほかはないと思います。まさに忍耐力と、信頼関係を築くスキルが試される場面だと思われます。
以上です。
ただ、こうした苦労の先に、仕事が上手くいきますと美味しいお酒が飲めます。産業医には産業医なりの苦労もあれば、面白さもあるのです。
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