私の場合、「臨床医に向いていない」「臨床医に戻ることができない」というわけで、もはや「臨床に戻る」という選択肢は残されていません。
一方で、「別に臨床はイヤではないけども、ハードワークにはもう疲れた。もう勤務医として働くのは難しい」ということで産業医になった、という方も一定数おられます(同僚にもいました)。産業医になったという点は同じですが、「退路はない」私とは結構な違いがあります。
産業医の中には、「臨床に戻る」という選択をされる方もおられます。もちろん、「別にやりたいことが見つかった」という前向きな理由で臨床に戻る人もいますが、「産業医になって後悔した」という方もおられます。
「思っていたのと違う…」パターン
どうして産業医になったことを後悔するのかと言いますと、産業医という仕事が「思っていたのと違った」「やりがいをあまり感じられない」「キャリアアップが見込めないから」といったことが理由としては多いのかな、という印象です。
「思っていたのと違った」というのは、転職する前にどのように考えていたのかというのは人それぞれではありますが、「もっとバリバリ、社員の健康向上のために啓蒙活動をしたり、自分の意見で先導できると思った」といった方もおられるかもしれません。
たとえば、「健康のために、施設内全面禁煙だ!」と一人で騒いだところでどうにもなりません。関係各所に根回しをして理解を求めたり(トップダウンでないと、なかなか物事は進みませんので、上層部に働きかけることは重要)、禁煙活動を長く地道に進めてその先にようやく実現できるものだったりします。
企業を相手にどう立ち回るか、といったところに産業医の面白さはあったりもしますが、そのあたりを面白く思えるかどうかはやはり人それぞれかな、といったところでしょうか。
「やりがい感じない」パターン
「やりがいをあまり感じられない」というところで言えば、やはり臨床との比較で、「病気の人が治る」「命を救う」といった実感は感じにくい仕事であるのはたしかではありますね。その点で言えば、やりがいを感じにくい、とは言えるかと思います。
また、肉体的にも精神的にお負荷がかかる業務も少ないため、「やり遂げた!」という実感も感じにくいのかな、といったところでしょうか。
ですが、社員さんが面談で本音を打ち明けてくれたり、人事労務担当者から頼られて相談をちょくちょく受けるようになったり。安全衛生委員会での講話で「今日は反応がよかったな」というような日は私的にはやりがいを感じることができたりもします。
「キャリアアップが…」パターン
「キャリアアップが見込めないから」については、昇給がない企業もありますし、職位も上がらないというところもあります。
資格としては、専門医資格もあったりしますが、指定の施設で勤務していないとと試験自体も受けられないですし、労働衛生コンサルタントも「うーん、とったけど…メリットはあまり実感できないなぁ」ということだったりします。

転職の入口のところで、「キャリアアップより、安定的にストレスを過度に感じず、ライフワークバランスに配慮した働き方をしたい」といった希望があるという方には産業医としての働き方はおすすめできますよ、ということは認識していただいた上で産業医になってみては、といったところでしょうか。
以上、産業医になってから「後悔する人」の理由と私見となります。たしかに、合う・合わないはありますし、無理して転職する必要もないと思います。
ですが、臨床で疲弊して、「私、向いていないかも…」と思い悩んでおられるような方でしたら、一度、「産業医を試してみようかな」ということ転職するのもよろしいのではないでしょうか。
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