産業医についての医師国家試験の問題で、「産業医の職務」について問われたものがありました。2007年に出題(101B22)された問題です。
産業医について誤っているのはどれか。
a 都道府県知事が任命する。
b 職場巡視の実施が規定されている。
c 労働安全衛生法に定められている。
d 健康調査などの疫学的調査を行う。
e 労働者50人以上の事業所では選任が義務付けられている。
101B22 解答
問題自体の答えとしては、「a」となります。産業医の任命は事業者によるからです。
労働安全衛生法
第十三条 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、厚生労働省令で定めるところにより、医師のうちから産業医を選任し、その者に労働者の健康管理その他の厚生労働省令で定める事項(以下「労働者の健康管理等」という。)を行わせなければならない。
一方で今回のこの問題、個人的には「d 健康調査などの疫学的調査を行う」についてやや引っかかりました。もちろん、「健康調査などの疫学的調査」を行う場合もありますが、そもそもこの問題文の根拠とは何なんだろうか、と思って「産業医の職務」について、改めて今回、書いてみたいと思います。
産業医の職務とは
安衛則第14条第1項に、産業医の職務について記載されています。条文そのままでなく簡単にまとめますと、以下の内容が産業医の職務となります。
1) 健康診断の実施とその結果に基づく措置
2) 長時間労働者に対する面接指導・その結果に基づく措置
3) ストレスチェックとストレスチェックにおける高ストレス者への面接指導その結果に基づく措置
4) 作業環境の維持管理
5) 作業管理
6) 上記以外の労働者の健康管理
7) 健康教育、健康相談、労働者の健康の保持増進のための措置
8) 衛生教育
9) 労働者の健康障害の原因の調査、再発防止のための措置
疫学的調査、つまりは集団を対象として疾患などに影響する因子を調査・研究するということで言いますと、たとえば「ストレスチェックによる集団分析」「労働者の健康障害の原因の調査、再発防止のための措置」なども該当してくるわけで、直接的な表現ではありませんが、上記の職務を実施する上で「健康調査などの疫学的調査を行う」と言えるのかな、と思った次第です。