私が臨床医から産業医へ転職しようと思った時、本当に情報は乏しく、周りに産業医の知人もいなかったので、まさしく「真っ暗闇を明かりもなく歩き出した」という状況でした。
当然転んだり、壁に頭を打ち付けてしまったようなことも何度もありました。途中、何度か「これは無理だな…」と思い、産業医になることを諦めようとしたこともあったわけです。
過去の自分に、「産業医の転職は、こうしたらいいんだよ」と伝えるとしたら…と思い、今回の記事を書いてみようと思いました。これから産業医に転職をしようということでしたら、まずは以下の「3つの山」を乗り越えることを意識してみてはいかがでしょうか。
キャリアプランの見直し
臨床医から産業医になるということは、キャリア上の大きな転換点となります。そのことへの戸惑い、迷い、葛藤というのはどうして生まれると思います。
私自身、後期研修医になりたての頃は、産業医になろうなんて思ってもみなかったですし、「専門医資格をとって、ゆくゆくは開業しよう」と思っていました。ですが、臨床医を続けていくのが難しい、自分に合わないという思いから産業医になろうとしたという経緯があります。
「臨床医以外の道を」という出発点だった私でも、それは産業医になろうということは迷いましたし、悩みました。そこは、時間をかけて「どうして産業医になりたいのか」「臨床を離れることを受け入れられるのか」という、気持ちの整理をまずはする必要があると思います。
この点、どう私が折り合いをつけたかと言いますと、やはり「産業医になってみたい、仕事をしてみたい」という興味が不安を上回ったというところがあります。何事も「やってみないと気がすまない」というタチであったのもあると思います。
また、当時の彼女や両親に「産業医になろうと思っている」と打ち明け、理解をしてもらえるよう話をしたことで気持ちが固まったというところもあります。このようなところで自分自身とも折り合いをつけていったというところだと思います。
認定産業医の資格を取得する
誤解されている方もおられますが、「医師なら誰でも産業医になれる」わけではなく、産業医になるには要件があります。
産業医未経験の方にとって、最も現実的な要件の満たし方としては「認定産業医の資格を取得する」ということであると思います。
認定産業医になるためには、「単位集め」を行う必要があり、しかも闇雲に50単位を取得するのではなく
・前期研修:14 単位以上
・基礎研修会 実地研修:10 単位以上
・後期研修:26 単位以上
と、指定されたそれぞれの単位を取得する必要があります。
実はこの単位集め自体が難しく、第一の難関であったりします。というのも、講習・研修の開催が受講希望者に比べて少なく、なおかつ50単位が一気に取得できる集中講座というものがありますが、それもまたなかなか予約できない状況が続いています。
現状、一番受講しやすいということでは、産業医科大学の集中講座(九州・東京開催)があり、希望者はまずそちらの予約を検討すべきではないかと思われます。私が今から単位集めをするなら、東京開催の産業医科大学集中講座を狙うのではないかと思います。
なお、単位集めだけでは認定産業医になれるわけではなく、医師会への申請が必要ですので、その点はお忘れなく。
産業医の転職活動
認定産業医の資格を取得して、ようやくスタートラインというところがありますが、そこから本格的な転職活動ということになります。
ただ、未経験ですとエントリーできる求人数が少なくなり(採用で産業医経験者を優先する企業があるため)、いわゆる「一社目の壁」を突破する必要があります。
この「一社目の壁」の突破の方法としては、
・求人数の多いエリア(関東近郊であれば、東京を中心とした首都圏)で転職を考える。
・複数の産業医が在籍していて、指導・研修体制が整っている企業であれば、未経験であっても受け入れ可能な可能性が高い。
・「二社目」での転職で希望条件(特に年収面)に近づけることを考え、まずは「経験を積む」ことを優先して考える。
・あまり求人を絞りすぎず、複数の求人にエントリーをする。
といったことがあります。こうした方法論につきましては、拙著「産業医になろう: コネなし・未経験の勤務医が産業医になるための方法論」に詳しく掲載しておりますので、お読みいただけますと幸いです。
なお、求人紹介会社は多くあり、「どれを選べば…」と迷ってしまうかもしれませんが、まずは大手の中から選ぶことをオススメします。やはり企業も、ドクターへの紹介を依頼する上で、大手に依頼しやすいため求人数も多く、なおかつ信頼を置きやすいと考えられるためです。
実際、私もエムスリーキャリア、リクルートドクターズキャリア[PR]に求人紹介を依頼して、3度の転職活動を行っています。まずはこの二社に登録してご相談をしてみてはいかがでしょうか。