大変、お恥ずかしい話ではありますが、私自身、ほとほと臨床医に向いていないと思っています。勤務医時代は、患者さんへの対応が問題でクレームを次々に入れられました。温厚かつ寛大な医長から「君は臨床医に向いていないね」と言われ、結局は退職することになりました。
産業医に転向した後も、非常勤で内科外来をやったり、問診中心の自由診療のバイトをやったりしていた時期がありました。しかし結局は、自分からやめるか、やめさせられるか、ということを繰り返しています。
短時間であれば「接客」として何とかこなせるのですが、年単位で働いていると、その化けの皮が剥がれてしまう。おそらくそういうことなのだと思っています。そもそも、産業医としてはなんとか続けられているのかな、とも感じていますが、それも自分だけそう思っているだけで、実際のところはどうなのかよく分かりません。ただ、少なくとも続けられてはいます。
もし今も臨床医を続けていたならば
今も臨床の現場に残っていたら、と想像することがあります。おそらく非常勤バイトの時と同様、職場を転々としていたのではないかと思います。一つの職場で長く続けられず、問題が起きるたびに別の場所へ、という繰り返しになっていたのではないか、と。
そんな私が言うのもおこがましいのですが、もし今、こんな状況が続いているようだったら、少し立ち止まって考えてみるのもいいかもしれません。
患者さんやそのご家族からのクレームが多い。コメディカルやスタッフの方々から距離を置かれている、あるいは嫌われていると感じる。上司から苦虫を噛み潰したような顔で見られる機会が増えた。小言をちょくちょく頂戴する。こうしたことが重なっているようであれば、それは「臨床医に向いていない」ことの一つの兆候なのかもしれません。
向いていない場所にいることのリスク
向いていない場所で無理をして働き続けることは、じわじわとストレスを蓄積させていきます。そしてそのストレスが限界を超えた時、問題は起きるものだと思っています。
感情が爆発して取り返しのつかないトラブルを起こしてしまったり、警察のご厄介になったり。あるいは、患者さんやご家族との間で、訴訟問題に発展するような事態を招いてしまう。そんな最悪のシナリオが、全くの絵空事とは言い切れません。私自身、臨床医を続けていたら、そんな事態に陥ってしまっていたかもしれない、と思っています。
「戦略的撤退」という考え方
「向いていないかもしれない」という自覚がある上に、周囲からも何らかの形でそれが示されているようであれば、やはり「戦略的撤退」を検討する時期なのかもしれないと思います。
ただ、戦略的撤退といっても、「臨床から完全に離れる」という選択肢だけではありません。「かなり臨床から距離を置く」「今より少しだけ距離をとる」など、幅のある選択肢があります。何も、「臨床医に向いていないなら産業医になれ」と言いたいわけではありません。臨床との関わり方を少し見直す、という段階の話であっても、十分に意味があると思います。
ただ、自分一人で考えていますと、「臨床を続けるか、やめるか」という、つい二択に自分自身を追い込んでしまうことがあります。しかし実際には、働き方の見直し方にはグラデーションがあります。
もし「向いていないかもしれない」と感じているようでしたら、今後の働き方をリクルートドクターズキャリア[PR]の転職エージェントに相談してみるのも一つの方法だと思います。誰かに話を聞いてもらうと、意外と「こんな働き方もあるのか」と思えることがあるものです。自分一人で抱え込まず、まずは話してみることから始めてみてはいかがでしょうか。
