産業医の仕事と言いますと、面談(復職可否判定、長時間勤務者面談、高ストレス者面談)、安全衛生委員会への出席、職場巡視などがあり、これらを「ある程度こなせる」レベルになるにはさほど時間はかからないと思います。
しかしながら、そこから先に満足のいく成果・結果を残せる仕事ができるようになるには、「壁」があるように思います。その一つの要因が「調整力」にあるのではないかと私としては思っています。
臨床医の場合、もちろん上司に報告・連絡・相談もある程度は必要ですが、基本的には「患者の診断・治療を自分で行う」決定権があると思います(当然、患者さんへのインフォームドコンセントを行った上ですが)。
一方、産業医はとなりますと、企業側に「○○をしたほうがいいですよ」と勧告をすることはできますが、絶対的な命令権はありません。これは
にも書いておりますが、安衛法第13条3、4に基づき、企業側は産業医の意見を「尊重しなければならない」とはありますが、「何がなんでも従わなくてはならない」わけであり、この点は「命令」とは違う点ですね。
では、企業側に「アドバイスを聞いてもらう」ためにはどうしたらいいのかと言ったら、それは「どこに話をしたらいいのか、そしてどう動いてもらうかの調整力」であると思います。
この点、普段からの人間関係づくり、組織がどのような構成になっており、どのような考え方・動きをするのかといったことも把握できていないと、なかなか「会社を動かす」ことは難しいと思います。
また、普段から「この先生の言うことは信用できる、耳を傾ける価値がある」と思ってもらえているという信頼も必要になります。こうした点はなかなか産業医初心者には難しく、苦労する点であると思われます。
そもそもこういう点は学生時代、臨床医になってからもあまりトレーニングしてこなかったという方が大半でしょうから、つまずいてしまうことも分かります。ですが、この点も産業医の仕事に慣れてくればできるようになりますので、あまり「自分は産業医に向いていない…」と思い過ぎなくてもいいと思います。
ですので、「産業医、興味あるけど会社と病院は違うし…なるのは不安」という方も、ぜひ一歩踏み出していただければと思います。認定産業医の資格は持っておられるという方でしたら、まずはリクルートドクターズキャリア[PR]や、エムスリーキャリアの転職エージェントにご相談いただき、どのような求人があるのか問い合わせてみてはいかがでしょうか。