私は後期研修医時代、医長から「君は臨床医に向いていないね」とハッキリと言われました。もちろん、薄々は感じておりましたし、勤務医をしていることが苦痛で仕方なかったということはありますが、そこまでハッキリと言われることにショックを受けつつも、「なら、辞めるしかないかな」と思ったのを覚えています。
当時の事情については、
にも書いておりますが、
・患者さん、他の医師、コメディカルとの関係性を上手く構築するのが苦手
・指導医の考えを先読みして動くことができない。
・そもそも時間的な拘束が長いところで働くことが苦手
・救急対応、時間外呼び出し、オンコール、当直、定時を過ぎてから開始される長時間カンファレンスが苦痛
などのことがあり、「臨床医として働くのは、これ以上無理」ということになったわけです。そこからは、しばらくのドロッポ医生活を経て産業医になっています。
「臨床医として働けなくて、なおかつ産業医もダメ」というケースもあり得るかもしれませんが、それでもなんとか私は10年近く産業医として働けています。
そこで今回の記事では、「臨床医として働くことにとことん向いていない私でも、10年近く産業医を続けられた3つの理由」と題して書いてみたいと思います。
圧倒的なQOMLの高さ
産業医のメリットについては、
こちらの記事にも書いておりますが、その一つとして「圧倒的なQOMLの高さ」が挙げられると思います。残業、当直、オンコール、深夜呼び出しはありませんし、時間外の電話も本当に数えるほどです。気兼ねなく晩酌もできれば、土日祝日に大手を振って遠出できます。
また、基本的に「週3~4日勤務/1日8時間勤務以内」のところも多く、勤務時間や日数が少ないことも私にとっては非常に快適に働ける環境でした。恐らく、医師として働く中で、トップクラスのQOMLの高さではないでしょうか。
複雑な人間関係からの解放
後期研修医時代、先輩医師たちと毎日のようにずっと顔を突き合わせ、ホッと一息つける医局ですら医師たちに囲まれている…なんてことがあり、今思うと濃密な人間関係の中にいたように思います。
また、他科の医師と上手く付き合っていく、コメディカルとも良好な関係を築いていく…ということが不得手だった私にとっては、複雑な人間関係から解放されたことはとてもありがたい環境であったと思います。
ただ、中には複数の産業医、保健師が在籍している大企業もあり、そうしたところは私にとって合わなかったと思っています。ですので、この点は企業によって異なると言えますが、少なくとも現在の企業は私にとって居心地の良い場所(他の産業医がおらず、保健師もいない)となっています。
理不尽な思いをしなくて済む
言い方は悪いかもしれませんが、後期研修医時代は上司や他科の医師から「患者さんを押し付けられる」ことも多かったり、患者さん本人やご家族から「そりゃないよ」というようなクレームを受けることもありました。
納得できないことがありますと、モヤモヤとした気持ちを引きずることが多い私ですが、産業医となった現在、そのような理不尽な思いを抱えることも少なくなりました。企業側からの「お願い」はあっても、命令などもなく、この点も非常に働きやすい理由かな、と私としては思っております。
やはり仕事である以上、ドクターの適性というものはあると思いますが、私のように「臨床医(勤務医)はもう無理!」と思われた方の中でも、産業医としては勤務を続けられるということもあるかもしれません。
もし現在、専攻医などで勤務医として働いておられ、非常に辛い思いをされているという方がおられましたら、産業医という働き方もあるのだと、頭の片隅に置いておいていただけますと幸いです。
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