医師の年収、「高ければ高いほど良い」というわけではないと思う理由

病院に勤務している同期から、「なるほどな」と少し考えさせられる話を聞きました。彼の同僚の医師である「Aさん」が、退職勧奨を受けて辞めていったというのです。

私は最初、「Aさん、何かやらかしちゃったの?」と思いました。医療ミスか、ハラスメントか、それとも人間関係でのトラブルか。こういった問題があって辞めさせられたのか、と思ったわけですが、そういったことではなかったようです。Aさんが退職勧奨を受けた理由は、「年収」でした。

「高い年収」が裏目に出た理由

Aさんは5年ほど前に別の病院から転職してきた医師で、その科の中堅として、それなりの活躍を期待されていたようです。前職の年収に上乗せする形で契約が結ばれ、入職することになりました。

ただ、入職後の働きぶりが、医長が期待していたものとは違ったようです。年収に見合った活躍とは言えず、さらに院内の他の医師と比べても年収が高い状態が続きました。その結果、「年収を下げるか、退職するか」という話し合いの場が設けられ、Aさんは退職を選択することになったそうです。

年収と「見合う働き」

「年収は高ければ高いほど良い、それに越したことはない」と、どうしても思ってしまうわけですが、転職においては、そうとも言えないわけです。そもそも、入職にあたっての採用面接では、「高い年収」が原因で落とされる可能性もあります。

また、入職してからも、Aさんのように「高い年収」がその人の期待値を上げてしまい、「見合う働き」をしていないと、厳しい目を向けられて、結果的に「年収を下げるか、退職か」と迫られる可能性があるわけです。

Aさんのケースを考えますと、「高い年収を吹っ掛けて入職することのリスク」というものが現実にあるのだと感じます。年収が高ければ、それに見合った期待値も高くなります。その期待に応えられなかった時に、「年収を下げてほしい」「このまま続けるのは難しい」という話にもなりかねません。

「高い年収で入職した」という事実は、採用側の目線を厳しくします。「これだけ払っているのだから」という基準が、知らず知らずのうちに評価の物差しになっていく可能性があるわけです。

病院経営の厳しさという背景

こうした状況に拍車をかけているのが、病院経営の厳しさです。昨今、経営に余裕のない病院が増えているわけで、コスト面での見直しが進んでいます。医師の年収は、他の職種のスタッフと比べると際立って高い場合があります。そのため、「医師への支出」が精査される対象になりやすく、「年収の引き下げ交渉」を受けるケースが以前と比べて増えてきているのではないでしょうか。

Aさんのケースは、こうした経営側の事情と、期待に応えられなかったという評価の問題が重なった結果だったと言えるかもしれません。

転職時の年収設定、どう考えるべきか

転職の際に希望年収を伝える時、「できるだけ高く」という発想だけで進めるのは、入職後の自分を苦しくさせるリスクがあります。

意識したいのは、「入職した後に困らない水準」という視点です。もちろん、自分の経験やスキルに対して適切な対価を求めることは正当なことです。ただ、高すぎる年収設定は、相手の期待値を必要以上に引き上げてしまう可能性があります。

「前職よりも少し上乗せできれば」という感覚は自然ですが、その上乗せ分が自分の実力で十分に返せる範囲かどうかを考えておくことも必要だと思います。また、院内での他の医師との年収バランスについても、面接の場や採用前に確認できるようであれば、把握しておくことが有益です。

転職先が「年収に見合った働きを期待している」という認識を持った上で、現実的な設定をすることが、入職後の安定した立場につながるのだと思っています。

まとめ

年収交渉はあくまでも「スタート地点」の話であり、入職後のことを見据えた設定であることが大切です。高い年収は魅力的ですが、それが「入職後の自分へのプレッシャー」になり得るという側面も意識しておく必要があります。

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