産業医として働いておりますと、メンタル不調の社員さんへの対応は、メインの仕事じゃないかと思うほどによく求められます(当方、元内科医です)。
転職してきて、早々にメンタル不調となってしまう社員さんというのも一定数おられるわけで、そうした方々がよく口にするのが「思っていたのと違った」「期待していた仕事と違った」というようなことです。
前職で同様の仕事をしていれば、おおよそのことは分かるわけですが、異業種に近い会社に転職をしますと、やはり「思ってたんと違うなぁ…」と思うことはやはり多いようです。
「思っていたのと違う」と気付いた
私自身の話で言いますと、勤務医→産業医への転職は、あまり「思ってたんと違う…」とはなりませんでした。「まぁ、こういうものだよな」と、イメージと大きな乖離はなかったかな、というのが印象です。
それよりも、労働条件の急激な改善(当直・オンコールなし、残業なし、土日完全フリーなど)や、ストレスフルな人間関係から解放されて、「なってよかったぁ!」と喜んでいたのが正直なところです。

自分を騙して…
そもそも、初期研修医の時にはかなりのハイポ病院にも関わらず、辛くて辛くて仕方がない、早くこうした状態から解放されたいと願っていました。その大きな要因としては、お世話になった先生方には申し訳ありませんが、「興味のない科に行かなければならない」というところが大きかったように思います。
後期研修医になって、一応は「興味のある科」だけになったら変わるのかもしれない、と淡い期待を抱いていました。「バリバリと仕事をこなして、独り立ちしたら変わるんじゃないか」という期待です。
最初は覚えることも多く、一つずつ経験して身につけられること、任せられることも増えていく状況に嬉しさを感じていたように思います。ですが、それもつかの間、段々と悪い意味で慣れてしまいました。

騙し続けることができずに
だましだまし、そして「いつか変わる」と思いながら数年、後期研修医として働いていましたが、やはり「向いてないな」と気づいてしまいました。そういう意味では、転職とは異なりますが「思っていたのと違う」と結果としてなったということでしょう。
それからはとても辛く、次第にその辛さは増幅していきます。その結果、転職を選んだわけですが、これがなかなかに大変です。「勤務医として働くのが無理」となった途端、「それ以外」の道を選ばざるを得ないわけですが、そこからどうするかというのはすぐに見つかるものではありません。
私も悩みながら、たまたま知った「産業医」としての仕事を選び、「興味もあるし、とりあえずやってみるか」と始めて今に至っています。もちろん、後期研修医の時には自分に向いている仕事かどうかなどわかりませんし、ましてやそれから10年以上続けるとも思っていませんでした。
最後は「飛び込む」勇気が必要
自分の特性や興味関心のあることを、ある程度は自己分析してみる必要はあるとは思いますが、最後は「とりあえずやってみるか」ということで飛び込んでみるしかないということになるのかな、と思います。
それでまた「思っていたのと違う…」となる可能性はあるとは思いますが、それでも結局は「やってみるか」という思い切りが必要になるのだと思います。

繰り返しにはなりますが、勤務医が自分に向いていない、と気づいてしまったということならば、失敗覚悟で「一度やってみる」ということも必要なのではないでしょうか。
ですが、いきなり飛び込む勇気などは最初からは持てません(よほど追い詰められていたり、腹に据えかねる出来事があれば別ですが)。そこには段階が必要で、リクルートドクターズキャリア[PR]などのキャリアエージェントに相談してみる、そこから転職を考えていく…といったことから始めた方が、納得もしやすくよろしいかと思います。

