私は今回、「産業医になろう: コネなし・未経験の勤務医が産業医になるための方法論」という本を電子書籍で出版致しました。
この本は、私自身の「後期研修をドロップアウトし、産業医に転職した」経験をベースにしておりますので、特に若手医師に向けて「産業医になる」ためにはどのようにしたらいいのか、という方法論について書いております。
PCに向かって原稿を書き続けていた中でふと思ったことですが、やはり大多数が選ぶ「臨床医としてキャリアを積む」道から外れる、別の道を歩み始めるということは強い決意・決断が必要になると思います。
そこで今回、専攻医が「産業医になろう」と思った時に、どのようなことを考えるべきなのかということについて書いてみたいと思います。
「リスタート・学び直し」の必要性
初期研修医、そして専攻医として研鑽されていた中で、産業医という別の道を歩みだすということはリスタート、つまりは「また一から学び、経験をしていく」ことになるのだとしっかりと理解をしておく必要はあると思います。
言わば、「学び直し」をすることになるわけで、そこで「色んなことを一から吸収しよう」とする姿勢であるのか、あるいは「もうある程度、医者としてやってきたわけだし、今までの知識や経験でなんとかやっていけるだろう」と思うのでは、大きな違いがあると思います。
こうした「リスタート・学び直し」をすることを許容できるのかどうか、というのは自分の中でよくよく問いかけをしておいた方がよろしいかと思います。

この点、私はあまり覚悟ができていなかったのか、「なんとかなるだろ」というノリでいい加減な仕事をしていて、痛い目に遭っています。入職する一社目選びでは、やはり「他の産業医の指導を受けられる」といった視点もまた大事であると思ったきっかけです。
「臨床医ではない」ことでのデメリット
最近、非常勤外来のバイト先を探していたりする中で、「現役の臨床医ではない」ことのデメリットを感じることもありました。
週1で外来のバイトを産業医になってからも続けてきたわけですが、やはり本業は産業医ということで、求人にエントリーしても書類選考の段階で、「門前払い」されることもありました。

それは雇う側からしたら、専門医資格持ちの現役勤務医などを雇いたいという気持ちはもちろん理解できます。客観的に見て、「バイト探しでデメリットもあるのかな」と思ったという次第です。
「産業医の仕事・給料だけで生活していく」ということでしたら、あまりデメリットも感じずにいられるかもしれませんが、「バイトも続けていきたい」というようなことでしたら、もしかしたら採用面で辛い思いをするかもしれないということは認識しておいた方がいいかもしれません。
キャリアアップの実感のしづらさ
臨床医(勤務医)の場合、専門医・指導医といった資格もあったり、あるいは院内で医長・部長などの管理職としてキャリアアップしていくといった分かりやすいキャリア形成が道筋としてあると思います。
ですが、特に「産業医一人体制」の企業で働いていますと、もちろん日々の業務の中で学びもありますし、産業医として特に産業衛生分野でキャッチアップすべき事柄も多くありますが、それでも目に見える形での「キャリア形成」は実感しづらいかもしれません。

その点、やはり「産業医」という仕事が好きで、そこに楽しみを見い出せるかということが重要になってくると思います。
以上です。
産業医のデメリットとしての部分ですが、やはり「産業医になろう」とお考えということでしたら、上記の点は踏まえて検討すべきではないかと思っています。
その一方で、やはりデメリットを補って余りあるメリットも存在していると思います。

QOMLは格段に向上して、働きやすい労働条件となると思います。また、時間に余裕が生まれて、バイトに精を出したり、あるいは仕事ばかりではない人生を取り戻すことができるようになると思います。
専攻医の頃に抱いていた、「あと数十年もこんな生活が続くのか…」「勤務医として働くことは、私には無理だ…」といった絶望感は産業医になってなくなりました。
もちろん、全ての臨床医に「産業医、いいですよ。なりましょうよ」と言うつもりは毛頭ありません。一方で、勤務医として働いていて、私と同様に絶望感や辛い思いをし続けているということでしたら、産業医になることをお考えいただくこともよろしいのではないでしょうか。
求人紹介を行っているエムスリーキャリアや、
リクルートドクターズキャリアにご相談して転職活動を始めることで、もしかしたら私と同様に「産業医になってよかった」と思える日がくるかもしれません。