「いきなり産業医」よりは専攻医を一度は経験してから産業医になることをおすすめする3つの理由

私自身、初期研修修了後に「いきなり産業医」になったわけでは決してありません。産業医になるなんてことはまるっきり考えていなかったわけで、後期研修医になり、「専門医資格を取得して開業しよう」と考えていました。

それも「開業医で地域貢献しよう」なんて前向きな理由ではなく、勤務医が向いていなくて、長くは続けられないだろうからという消去法的な理由です。

今考えてみると、「一度は後期研修医になっておいてよかった」と思うわけですが、その理由について書いてみたいと思います。

役に立つ臨床医時代の知識や経験

昨今ですと、「抗がん剤治療をしつつ働く」なんてことも珍しくありません。そうした社員さんたちの面談を産業医として行うわけですが、その時に「ああ、今、4クール目か。骨髄抑制とか大丈夫かな」「今の薬はあんまり聞いてないのか。そろそろ主治医は別の薬に変えて2nd-lineに入る頃かな」「入院治療はなくなったか。外来での投与に切り替えるのか」なんてことが分かったりします。

これはやはり実際に後期研修医レベルではありますが、抗がん剤治療に携わっていたから分かることだと思います。

他にも、「心筋梗塞で入院治療していた」「脳梗塞で入院していた」なんて社員さんが来るわけですが、退院後の生活や就業上、どのようなことに注意する必要があるのかといったことが分かっているため、面談で話をすることや就業制限の検討などがスムーズにできているのではないか、と思います。

このことを考えると、後期研修医としての数年間は決して無駄ではないですし、「やっていてよかったな」と思えます。

「バイトの選択肢の幅」に大きく関わる

初期研修修了後レベルと、専攻医を経験して「外来である程度診療できる」レベルですと、選べるバイトの幅は格段に異なると思います。

もちろん、「バイトで外来診療も学んでいけばいいじゃないか」と思われる方もおられるかもしれませんが、やはりバイトですと指導医がついてくれているわけでもありませんし、気軽に相談できる相手もいません。

やはり専攻医の際に、しっかりと「外来診療のいろは」などを学んで習得しておくことには意味があると思います。

転職活動でのメリット

産業医なので、「臨床医時代の経歴はあんまり関係ないでしょ」と思われるかもしれませんが、産業医の採用を決める際に「臨床経験」をある程度重視する企業もあったりします。

また「臨床経験+産業医経験」で、医師として「ある程度、経験を積んでいるドクターを採用したい」という場合もあります。ですので、初期研修を終えて「さぁ産業医だ」と転職活動をするよりは、専攻医を数年経験してから転職活動をした方が、「転職しやすい」ということもあると思います。

この辺は企業によってかなり異なるところですが、私は「年齢が若すぎる。経験年数が少ない」という理由で大手企業を最終面接で落とされたこともあります。結果、その企業は産業医を再募集することになったわけですが、年齢制限でエントリーすらできませんでした。

ですので、もし「専攻医か、産業医か…」と迷われているようでしたら、私としては専攻医である程度、臨床経験を積むことをおすすめしたいと思います(専攻医が眼中になく、「産業医をやりたいんだ!」という人は別です)。

一方で、「もう専攻医をやることは限界。産業医をやってみたい」ということでしたら、産業医の転職活動をやってみてもいいのではないか、と思います。もしご興味がありましたら、認定産業医など、産業医になるための要件を満たした上で、エムスリーキャリアや、リクルートドクターズキャリアなどにご登録の上、求人紹介を受けてみてはいかがでしょうか。意外と「未経験で応募可能」な求人もあったりしますよ。

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