初めての産業医転職でよくある質問とその回答まとめ

私自身、後期研修医を辞めて産業医へ転職する時、全く知識もなかったですし、現在ほどネット上にも情報がありませんでした。そのため、本当に闇雲に転職活動を行って頓挫し、結果、数ヶ月バイトだけで食いつなぐという生活を続けていました。

最近は本当に転職情報も多く、つまずいてしまって私のような状態に陥るなんてことはないと思いますが、未だに「産業医になろうと思うんですが…」とご質問や相談をいただくことはあります。

そこで今回は、初めての産業医転職でよくある質問と私なりの回答について書いてみたいと思います。

経験もなくて産業医になれる?

産業医未経験でも、産業医になれるのか、と思われるかもしれませんが、「なれます」というのが回答になります。

「産業医科大学を出てないけど」「企業に知り合いもおらず、コネもないけど」「大学や医師会からの紹介もしてもらえそうにないけど」なんてことも言われますが、それでも「なれます」というのが答えです。

実際、私も「コネなし・医局や医師会からの紹介なし(医局はほぼ退局状態、医師会は未加入)・地方の国立大出身」でしたが、現に産業医をやっています。ついでに言えば、後期研修医の時にドロップアウトしているので専門医資格すらありません。

たしかに、経験者に比べて「未経験」というのはある意味、ハンデを負った状態ではありますが、それでも産業医になることはできます。

未経験で「これから産業医になろう」という医師に伝えたい3つのポイント
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「○○科の医師」だけど産業医になれる?

メンタル不調者の面談などもあるため、中には「産業医って、精神科じゃないとなれないんじゃないの?」と質問をしてくる人もいます。ですが、何科であろうが産業医には「なれます」。

たしかに、企業の中では「精神科の経験者優遇」というところもありますが、それでも「精神科じゃなきゃなれない」なんてことはありません。

私は内科医でありましたが、産業医になっており、転職の際に「内科医だから」ということで有利にも不利にも感じたことはありませんでした。
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産業医としてやっていけるか不安…大丈夫でしょうか?

産業医にも、もちろん「プロ」「スペシャリスト」という方もおられるとは思います。ですが、「企業が求める一般的な産業医の仕事の水準」をクリアすることは、大概のドクターはクリアできると思います。

中には、産業医に求める期待値がかなり高いという企業はありますが、そのような企業はそもそも採用の時に弾かれるので、入職できているということであれば、問題なくクリアできると思います。

おおよそ3ヶ月ぐらいあれば、面談・安全衛生委員会・職場巡視といった基本的な仕事については「なんとかこなせるかな」ということになると思います。それ以外のイレギュラーな対応などについては、経験を積んでいけば問題ないのではないでしょうか。

産業医としてのキャリアの積み方って?

臨床医でしたら、基本的には専門医という分かりやすい一つの資格があるのでイメージがつきやすいですが、産業医はやはりなかなかキャリアの積み方がよくわからない、というご質問もあります。

産業医にも、日本産業衛生学会の「産業衛生専門医」資格という資格があります。しかしこちらは、臨床医のように「産業医はみんな取得する」といった感じではありません。そもそも、指定された施設での研修が必要であり、それ以外の企業で勤務していても受験資格は得られないわけです。

そこで、一般的な産業医としては「労働衛生コンサルタント(保健衛生)」の資格を取得される方が多いように思います。実際、私も取得をしました。こちらを取得するメリットとしては、

・転職の際に若干有利になる(資格の存在や難易度を知っている面接官がいれば)

・認定産業医の更新をやめる口実になる(労働衛生コンサルタントに合格していれば、それだけで産業医資格となる。認定産業医でも産業医資格となりえますし、なおかつ更新がなくても産業医は続けられるわけですが、「更新していない」ということで企業側にマイナスイメージを持たれる可能性がある)

といったことがあり、私も転職の「転ばぬ先の杖」として取得をしたわけです。

ですが、産業医はまだ希少であり、「産業医として経験を積む」こと自体である程度のキャリアとして、みなしてもらえる状況であると思います。それに加えて、ある程度の大企業・有名企業に勤務しておけば、履歴書での評価は上がると思います。

転職活動をしていても、内定が得られない

これは私も本当に悩みました。初心者が転職活動でつまずきやすいポイントとしては、

・求人が少ないエリアで探している:社員1000人規模の大企業は、やはり首都圏、名古屋、大阪、京都などの大都市圏に集中しています。ですので、できるだけ求人の多い大都市圏で探すようにしましょう(通勤時間が長くなることや引っ越しも覚悟)。

・求人数が少ないシーズンで探している:入職を希望する月としては、4月>1月>10月の順で多くなります。ですので、4月入職を目指しているののであれば、11月頃から次第に求人が多くなってくるわけなので、「1月だし、そろそろ転職活動始めるか」なんて思っているともう既に遅いということになってしまいます。

・採用面接対策が不十分:最低でも、「なぜ産業医になろうと思ったのか」「産業医になってどんな仕事をしたいと思っているのか」「なぜこの会社を選ぼうと思ったのか?」ぐらいは答えられるようにしておきましょう。

産業医の採用面接で聞かれやすい質問と回答のポイントまとめ
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・求人とのミスマッチ:産業医未経験で、受け入れやすい企業の特徴としては、「産業医が複数在籍していて、教育体制がしっかりとれる」ということになります。ですので、そうした企業に積極的に応募していきましょう。

・希望条件と折り合わない:勤務医時代の年収と比較して、「うーん…ここでは低いな」と思い、なかなか希望条件と織り合わないということもあると思います。しかしながら、その場合も週5→4日勤務となった残りの1日で非常勤バイトを追加するなど、トータルで年収を考えるといったことを検討していきましょう。

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そもそも産業医の転職をどうやればいいのか分からない

産業医の転職においても、やはり最低3ヶ月以上、できれば半年程度の転職活動の期間を設けておくようにしましょう。たとえば、4月入職であれば、11月ぐらいには動き始めるイメージです。

まずは希望条件について、ある程度のイメージをもっておきたいところですが、勤務医でありますと、産業医の求人票を目にしていることなどないのではないでしょうか。「産業医の年収の相場ってどれぐらいだろう…」など、分からないことだらけだと思います。

ですので、まずはエムスリーキャリアや、リクルートドクターズキャリアなどの求人を紹介してくれる会社に登録し、勤務地やおおよその希望年収、転職希望時期などを伝えて、求人紹介を受けてみましょう。

その求人票をザッと見るだけでも、「相場観」というものが分かると思います。基本的には、「週4日勤務、1日7時間、年収1000~1300万円」(残業もほとんどなく、当然、オンコール・残業・時間外呼び出しなどなし)といったところが多いのではないでしょうか。

気になった求人があれば、紹介会社を通じて応募しますし、そうでなければ、「送られてきた求人がどのように希望と異なるのか」といったことを担当者にフィードバックし、新たに求人を紹介してもらいましょう。

求人に応募し、書類選考が通れば採用面接になります。採用面接は基本、2回となっており、一次面接→最終面接となります。そこで内定が出ればそこに入職するか検討し、内定が出なければまた求人選びに戻る、といった流れになります。

もちろん、途中で「やっぱり転職やめた」と考えることもできまし、ドクターは全く費用がかかりません。ですので、「転職、してみようかな」と考えたら、まず転職活動をしてみるのもいいと思います。

産業医の転職で、どの求人紹介会社を選べばいいか分からない

初めての転職活動であったり、あるいはなかなか内定が出ずに行き詰まっていますと、「求人を紹介してくれる会社が悪いんじゃないか?」などと思いがちです。その結果、やたらに求人紹介会社に登録しまくってしまったりするわけです。

ですが、それで上手くいくかといいますと、私自身、上手くいきませんでした。結局は大手の求人ですでに紹介を受けたものばかりで、「とっておきの非公開求人」なんてものはありませんでした。

また、マンパワーもしっかりあって、転職まで毎回フォローをしてくれたのは、最大手のエムスリーキャリアと、リクルートドクターズキャリアでしたので、私としては「この二社に登録しておけば十分」と思っていまし、今後、転職することになったとしても、この二社だけに依頼すると思います。

実際、3社以上に登録してしまいますと、担当者とのやりとりが面倒になってしまいます。できることならば、広く浅くよりも、深く厚くコミュニケーションをとった方がいいと思いますので、あまり多く登録するよりは二社に絞る方がベターだと思います。

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