産業医として、糖尿病治療に消極的な社員の就業制限をどう考えるべきか-血糖値やHbA1cによる就業制限は可能?

健康診断を実施し、糖尿病が疑われる社員さん、もしくは糖尿病治療中で血糖コントロール不良な社員さんが少なからずいます。そんな時、受診勧奨を行ってもなかなか受診してくれなかったり、受診していてもHbA1cが10%近かったりするわけです。

そんなとき、「このまま放置するようだったら、就業制限をかけるしかないか」といった意見が持ち上がることがありますが、「空腹時血糖値」「HbA1c」の値ですぐさま就業制限をかけられるかと言うと、なかなか難しいですね。

たとえば、極度な高血糖で「今にも意識を失ってしまいそう」という方なら話は別ですが、そうではなく、「緊急を要しないが、放置していい値ではない」というようなケースであると、なかなか治療に前向きになってもらえないと、やきもきします。

企業によっては、「HbA1cが10%を超えたら、就業禁止」といったことが決まっているところでは話が早いですが、なかなかそこまで決まっているところは少ないでしょう。そのため、「糖尿病患者で、コントロール不良=即、就業禁止」とはなかなか言えません。

ただ、糖尿病と合併症は密接に関わっているのは周知の事実でしょうから、その評価はしっかりと行う必要があるでしょう。
・頚動脈エコーでの動脈硬化の評価
・眼底検査
・尿検査
など、もし健康診断や人間ドックで検査していないケースでは追加でして頂いたり、主治医の意見書・診断書などを書いてもらうといったことを行い、場合によってはそうした合併症を理由に就業禁止措置をとる、といったことが必要になるかもしれません。

なお、「面談を何かと理由をつけて拒む」「メールや電話をしても返答がない」といったことがあれば、しっかりと記録に残しておきましょう。もし就業上、トラブルが起きた場合、大事な証拠となりえます。

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