社員から「ブラック産業医」と批判されないために必要な3つのポイント

企業側と結託し、不当な解雇に手を貸す産業医のことを「ブラック産業医」と呼ぶようですね。4月13日、厚生労働省に弁護士らが申し入れを行ったことでも、一部で話題となりました。

今後、企業だけでなく産業医も訴訟の対象となる可能性は十二分に高いと思われます。そこで、「ブラック産業医」と批判されないために必要な3つのポイントについて、今回は書いてみたいと思います。

1) 客観的なデータを集める

産業医の役割の一つとして、休職者の復職可否判定があります。その意見をもとに企業も復職の可否を判定するわけですが、そこでなんの根拠もなしに、もしくはなんとなくという理由で「復職不可」などと言われても、社員さんは納得できません。

そこで重要なのが、意見を述べる上で必要な「客観的なデータを集める」ということであると思います。そのデータとは、
・主治医意見書:主治医による復職の可否判断がなされた診断書のほかに、どのような根拠をもって復職可能としているかの意見を求める。また、復職する上でどのような就業制限・配慮が必要かといった意見を記載してもらう。
・生活活動記録表:1日、どのように過ごしているか継続的に記録してもらう表。生活リズム、活動量などが把握できる。メンタル疾患であれば、1日の中での気分変調についても記載してもらう。
・処方記録:主治医が処方した内服薬の増減などが把握できる。
・リワーク通所記録:リワークに通所している場合であれば、出席率はどの程度なのか、遅刻・早退などはなかったかなどについて記録してもらう。
・通勤練習記録:会社に通勤する練習(定時での通勤を想定して)をしている場合、その記録をつけてもらいます。できれば実際に出勤できているかどうか、医療スタッフやほかの社員が確認することが望ましい。

などが挙げられます。こうしたデータをもとに判断をすることで、企業側・社員側も納得しやすいということになるのではないでしょうか。ただ、生活活動記録表など、社員の記載となるため、実際とは乖離している可能性もあるので、しっかりと確認することが必要です。

2) 復職の条件をあらかじめ提示

復職にあたっては、「これをクリアしていたら、復職可能と考える」という条件をあらかじめ社員さんにお伝えしておくとよろしいでしょう。

こちらについては、会社側であらかじめ決められていたりしますが、そうした条件がない会社もあります。その際には、産業医側で人事労務担当者と相談し、あらかじめ条件を決めておきましょう。その上で、社員さんに提示・理解を求めるとよろしいでしょう。

たとえば、
・生活リズムが整っている(睡眠リズムが整っており、食事もしっかりとれている。昼寝もしておらず、日中の活動量も十分であり、定時に出社可能と考えられるレベル)。
・時間外勤務なしの上で、通常勤務が可能(通勤が可能、定時での勤務が可能)
・休業前のパフォーマンスの80%が出せる。
などです。こうしたことを条件として出し、クリアされているかどうかによって復職可否の判定を行うとお伝えしておき、生活活動記録表、通勤練習・リワーク記録などを確認して判定します。

3) 面談では十分な時間をとり、しっかりと話を聞く

あまり話を聞かないで「復職不可」などと言われても、それは納得いきません。十分な時間(少なくとも1回の面談で30分)をとっておき、面談するようにしましょう。

あまり不用意な発言をすると社員さんの不信感を生みます。そこは面談のたびにブレるようなことを言わないようにしましょう。また、主治医意見と異なる意見についても、社員さんの反発を招きます。その点も注意しておきましょう。

面談を実施したら、社員さんの発言内容など、しっかりと記録を残しておくことも忘れないようにしましょう。カルテ同様、いざというときの証拠になります。

以上です。
産業医を長年やってこられている先生方には当たり前のことでしょうけども、私が産業医になりたての頃は、こうしたことも分からずに苦労しました。少しでも新米産業医の先生方にお役立ていただければと存じます。

また、産業医の世界にご興味がおありでしたら、ぜひ飛び込んでいただければと思います。まだまだ産業医を必要とする企業も多いと思われます。

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エムスリーキャリアエージェント

リクルートドクターズキャリア
などをご参考いただければ掲載されています。

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